――――――――― ・・・貴方は覚えているだろうか?
オレと貴方が、初めて会った日のことを・・・



















Encounter
with a treasure hunter



















それは放課後。生徒会室に向かうために、オレがちょうど階段を降りているときだった。



オレのすぐ脇を、見知らぬ2人の生徒が階段を駆け上っていった直後。
衝撃と同時に視界が揺れ、軽いなにかの落下音と共に、視界がぼやけた。
その変化に、掛けている眼鏡が落ちたのだと自覚する。




「あ、悪い・・・」


「おいッ!ソイツ確か≪生徒会≫の・・・!!!」


「げッ!やば・・・ッ!?」


「逃げるぞ!!」




一方的な会話に続いて、バタバタと廊下を駆けていく2つの足音。
大人しく謝って眼鏡を拾っていれば、1発殴るだけで済ましてやったものを・・・。




「・・・ちくしょう。」






・・・くそっ!さっきの声、絶対忘れねぇ・・・ッ!!






ずっと忘れないでいて、いつか絶対に潰してやる・・・!
そう心に固く誓うと、オレは惨めに地面に這い蹲って
どこに落ちたかまるでわからない眼鏡を探しに掛かった。

音は一回しかしなかったから、階段を転がっていってはいないだろう。
けれどもほとんど見えないこの視界の中で眼鏡を探すのは、結構大変な作業だった。
レンズも無色透明なら、オレの眼鏡はフレームも細めで
これだけぼやけた視界では、フレームすらほとんど映らないだろう。

せめてもの救いは、もうすぐ下校の鐘が鳴るせいで
いつもなら人通りの決して少なくない階段に、生徒の姿がほとんど見当たらないことだろうか。
・・・この無様な姿を、見られなくて済むのだから。




「・・・あれ?君、なにしてるの?」


―――――――――― ・・・ッ!?」




ところが、すっかり誰もいないと思い込んでいた空間からふいに声を掛けられる。
完璧な不意打ちにオレは酷く驚いて、大慌てで声のしたほうを振り返った。






さっきまで人の気配なんてまるでしなかったのに・・・ッ!?






「なにか、探し物?・・・あ。もしかしてこれかな?」


「???」




オレの内心の思惑に、全く気付く様子もなく
突如湧いて出たように現れた人物は、呑気な声でそうの給う。

・・・そこにぼんやりと人影があるのはわかるのだが
その人物が“ナニ”を指して“コレ”と称しているのかが解わからず
オレは必死に目を凝らし、眉を顰めた。




「うん、それっぽい。ねぇ、右手出して。」






――――――――― ・・・今、思えば。
そのときどうして、言葉通りに素直に右手を出したりなんかしたのか。
もしかしたらこの時点で、あの人には負けていたのかもしれないなんて思う。
既に最初から、勝負は決まっていたんじゃないかって・・・






「ハイ。」




しばらくすると前に差し出した右手に、軽くて手慣れた感触。
やらなくてもいいものを、律儀に折りたたんであるそれを
両手で広げて耳に掛けると、視界がいつも通りの明瞭さを取り戻した。




「あ、すいま・・・・・ッ!」




一応形の上だけでも、礼を述べておこうとしたオレは
眼鏡を手渡してくれた人物を見て、愕然とした。
目の前でにこにこと、警戒心の欠片もない笑顔をオレに向けているのは・・・









―――――――――― ・・・≪転校生≫!!









名前は覚えていない。
けれどコイツは、確かに2人いる≪転校生≫の内の片割れだ。
それが噂の≪転校生≫だとわかったのは
昨日阿門さんに、≪転校生≫についての書類を見せて貰ったばかりだったから。
けれど、証明写真に硬い表情で書類に写っていた≪転校生≫と
今目の前で呑気に笑っている人物は、同じ筈なのに別人のような印象を受ける。




「どうかした?・・・大丈夫?」


「・・・いえ、大丈夫です。ありがとうございました、センパイ。」




ぼうっとしているオレに気が付いたのか
≪転校生≫が不思議そうに首を傾げたので、オレは慌てて返事を返す。
“センパイ”の部分に、ちょっとした皮肉を声に乗せて。




「そう、なんでもないんならいいんだ。」




ところが≪転校生≫は、オレの皮肉に全く気付きもせず
穏やかな表情をつくると、にっこりと微笑んだ。

・・・まるで、女みたいに笑うヤツだ。声も、男にしては高めだし・・・。
あの雛川とかいう教師みたいで、なんだか気に食わない。




「あの、セ・・・」


「截那クン、どこにいるのーーッ!?もう、マミーズ行くよーッッ!!」




もう少し会話を続けようとしたオレの声を遮って
女生徒の大声が人気のない廊下に響き渡った。

それに≪転校生≫は敏感に反応を示して
顎のラインの辺りまである艶やかな黒髪を、ふわりと靡かせて振り返る。
そして階段の2段目に足を掛けると
声の聞こえてきた方向に向かって、負けないぐらい大きな声で叫び返した。




「八千穂!俺こっち!今そっち行くーーー!!!」






・・・セツナって名前なのか。






そういえば、読もうと思えばそんな風に読めそうな
なんだかややこしい漢字を見かけたような気がする。




「じゃあ、俺行くから!またね!」




そう言うなりその人は、オレの返事も待たずに走り去っていった。
残されたのは、ポカンと口を開けて置いてけぼりを喰らっているオレひとり。








“また”って、わかってて言ってるのか・・・??








「ごめーん八千穂!!お待たせッ!!」


「もうッ!どこ行ってたのッ!?
いきなり消えちゃうんだもん、探したじゃないッ!」


「ごめんごめん!じゃあ、行こうか!」




騒がしい声が、段々と遠ざかっていく。
まるで台風のような人だ。しかも、かなり大型の。
先読みの出来ない行動パターンに、オレとしたことが相手のペースに乗せられっぱなしで
結局、きちんとした皮肉の1つも言えず仕舞いだ。












これがオレと、≪生徒会≫の敵である≪転校生≫との出会い。
・・・最も。貴方は何も知らなかったのだから、意識していたのはオレだけでしょうけど。
間抜けな人間だと思った。自分のところまでなんて、到底辿り着けないと思った。
でも何故だか、貴方という人はオレの中に強く焼きついた。


・・・それはもう、鮮明に。


少なくとも、次にまともに出会うときまで。
オレは貴方に名前すら告げていなくて、貴方はオレの存在すら知らなくて。
オレも貴方の名前を訊ねたりしなかった筈なのに
幾度もその響きを確認して、それまでずっと忘れずに、覚えていたぐらいには。


≪生徒会≫として初めて顔を合わせたときのセンパイの顔は
・・・きっと一生、忘れられない。
制服と同じ、サイズの合ってないだぶだぶのジャージを着て
瞳を真ん丸くしてオレを見ていた、貴方の表情は。












「あ、あれ・・・?君、確かあのときの・・・」


「・・・その節はどうも。貴方の言う通り、“また”会えましたね、截那センパイ。」


「あ?截那。お前、夷澤のこと知ってたのか?」


「・・・・・・えぇーーーッ!?メガネ君って≪生徒会≫の副会長補佐役だったのッ!?」


「・・・なんすか、そのメガネ君って・・・」


「だ、だって!!俺、メガネ君の名前聞いたことなかったもん!」


「・・・それもそうでしたね。夷澤です、夷澤凍也。
これからよろしくお願いしますよ、截那センパイ?」


「・・・え・・・・・えええぇぇぇえええッッッ!?」


「・・・全く。肥後や砲介に続いて次々と・・・!!
何時、何処で俺の知らないうちに知り合いになったんだ?答えなさい、截那!!」


「く、九龍!?えと、そんなこと言われても・・・!!
確かもうずっと前に、階段のところで・・・あっ!ちょっと待ってよ、メガネ君!!」




だから違うって言ってるじゃないっすか。
オレはそれに答えることなく背を向けると、背後の喧騒をBGMに
先に行ってしまったセンパイ達を追いかけて、再び歩き出した。
・・・やっぱり、ちっとも変わってないっすね。その訳の解らないところ。









・・・でもまぁ。精々楽しませてくださいよ?截那センパイ。









蹴り飛ばしてみましょう?
この學園の、くだらない規則なんて。
オレが欲しいのは、今あるそんなものじゃなくて。

柵から出ることを考えもしないで
頭上に広がる自由に気付きもしない羊達を、支配できるだけの権限を。

この枠をぶち壊すことを、貴方も望むなら。
踏み潰してみましょう?
オレはオレなりのやり方で。貴方は貴方のやり方で。
オレは自由が欲しいわけでも、理解を求めているわけでもないから。

―――――――――― ・・・欲しいのは、貴方の言葉。

この學園で貴方が見出した“答え”を、オレに聞かせてください。



















戯言。


いきなりですが、夷澤との出会い編です。しかもよくわからない代物。
あまりにもPIERROTの新曲、『MYCLOUD』が夷澤ソングだったものでそこから捏造。
・・・しかし、未だ夷澤というキャラが掴めず(汗)

夷澤はいつから
操られて、アレやっていたんだか知りませんが
うちの子はかなり初期の時点で、夷澤と遭遇しています。
・・・いえ、特に意味はなくメガネ君と呼ばせたかっただけだったりするんですが(笑)

ところで彼、視力1.2って書いてあるんですが
え?それって矯正視力だよね?
だって風呂イベントで見えてないでしょ!?
じゃなかったらあんなに目細めて誰だか知りませんけどなんて言わないよね!?

・・・というわけで、うちの夷澤は矯正視力1.2の
裸眼0.2ぐらいってことでお願いします(笑)
ちなみに、遭遇時点では截那が女だとは気付いてませんが
後々知るので、たま〜に入る語りっぽい夷澤は
女だと知っていることにしておいてやってください(汗)





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2004/10/25