Life x Love x Live
=バスタイム編=






「また、そのままにして出てきたの?」



フローリングの床にポタポタと垂れている水滴を見て、は唸った。
道標のように続いているこれは、今の家に居座っているあの男の元へと続くに違いないのだ。



「・・・・・・面倒、だろう?」



その男・・・平知盛は、ズボンだけはきちんと履いていたが、上半身は裸のままで
湿ったタオルを首にかけ、濡れた髪から元お湯だった水を滴らせながら、を振り返った。
他人どころか自分のことすら頓着しない知盛に、ははぁと溜息を吐く。



「ちゃんと乾かさないと、風邪をひくよ?ドライヤーの使い方は教えたのに。」



はぶつぶつ言いながら、洗面台の棚を探る。
そうして目的のドライヤーを見つけると、そそくさと知盛のいるリビングへ戻った。



「ほら、そこに座って。乾かしてあげるから。」



手近なソファーを指し示し、手招きすると、知盛は意外と素直にそれに応じる。
だがそれが、どうやら自分相手のときだけらしいことは、にも最近やっと解ってきた。
知盛が座ったのを確認して、ドライヤーのスイッチを入れる。
その轟音に、知盛は耳障りそうに眉を顰めて、熱風に勢い良く煽られた髪が入らないよう、瞳を細めた。

それをまるで猫のようだと思いながら見つめて、はまだ濡れている知盛の髪に手を通す。
彼の髪は意外と触り心地が良くて、もっと触っていたかったが
と違って短い知盛の髪は、ものの十分もしないうちに乾いてしまった。
カチリとスイッチを切り、櫛で丁寧に梳く。



「知盛の髪は短いのだから、すぐ乾くのに・・・・・・はい、終わり。
冷えないうちに、服もきちんと着て。」



そう告げると、知盛は本当に乾いたのか確認するように、自分の髪に指を差し入れ、ぐしゃりと掴んだ。
洗い立ての知盛の髪は、いつもよりクセがなくて、彼の弟そっくりになる。



「こうしていると、重衡とそっくりだね。」



思わず口に出してしまうと、不満そうな知盛の顔がゆっくりを振り返った。
しまったと思う。何故か知盛は、が重衡の名を出すとすぐ不機嫌になるのだ。



「・・・ほう?神子殿はそれほどに重衡が良いのか?」



この世界では、元・白龍の神子の片割れなんて肩書きは意味を成さないのに
揶揄するように、わざとそう呼ぶのは、彼の機嫌が悪い証拠だ。



「・・・・・・そんなこと、一言も言っていないよ?」



呆れたように言えば、知盛はなにかを要求するように、の手首を強く掴んで引いた。
・・・きっと手首には、彼の手の痕が残るだろう。
いつもやめてというのだけれど、知盛は方法はなんにせよ、に己の痕を残したがるのだ。

知盛が何を要求しているのかに気づきながら、が何もしないでいると、
知盛の眉間に段々と、深い皺が寄ってゆく。

・・・あぁ、このまま機嫌を損ねると、あとが大変だ。

は諦めの溜息を吐いて、知盛の髪を数回撫でた。
そうして長めの前髪を手で掻き分けて、露わになった額に唇を落とす。

を拘束していた知盛の手が、ふと緩むその瞬間を見計らって、は知盛の拘束から逃れた。
知盛は唇を落とされた箇所を指で触り、それからどこか不満気にを見あげる。
その視線の意味を正確に把握しながらも、はサッと踵を翻した。



「駄目。これ以上は、駄目。」



こういうときは、さっさと逃げるに限る。
そうでないと、もっともっとと要求されて、取り返しがつかなくなるのだ。

そう思ったは、ドライヤーのコードをくるくる巻き取りながら、知盛から距離を取る。
部屋を出る間際、じゃあこのままお風呂に入ってくるからと告げて、知盛の顔をあまり見ないで、すぐ扉を閉めた。

知盛の瞳には、力があるのだ。

瞳の色が深すぎて、ついつい吸い込まれるように見入ってしまう。
そうしたら最後、は耐性があるので言いなりとまではいわないが、知盛を無視できなくなる。
見てしまったら負けてしまう、だから見ては駄目、は自分に言い聞かせた。






○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ●






「・・・それで、どうして付いて来ているの。」



洗面台の大きな鏡に、まるで背後霊のように映り込んでいる知盛の姿を見つけたは、そう低く唸った。
問われた知盛は、けれどさも当然とばかりに笑う。



「クッ・・・聞かなくても、わかるだろう?
神子殿が湯浴みをなさると仰せられるので、俺も御供しようと思ってな。」



言いながら、知盛は後ろ手に脱衣所の扉を閉め、覚えたてのやり方で、カチリと鍵を閉めた。
つまりもう、に逃げ道は残されていないということだ。



「・・・・・・知盛は、さっき入ったばかりでしょう。」

「是非とも背中を流して戴きたくてね。」



にんまりと口の端を吊り上げた知盛によって、
あっという間に壁際に追いやられてしまい、は観念して肩を落とした。



「・・・・・・・・・どこをどう間違って、こんな子に育ってしまったのかな・・・」



ぼそっと呟いたの、服のボタンに早くも手を掛けながら、
珍しく意気揚々とした声で、楽しげに返答する知盛の衣服といえば、
まともに着ているのはズボンのみで、それすら既にファスナーが降りている。



――――――――― ・・・何を今更。全て、お前のせいだろう?」



耳元に低く囁いて、ついでに耳を一舐めした知盛は、
至極機嫌良く、次々との衣服に手を掛けてゆく
――――――――――



「・・・また濡れたら、今度は俺が風邪を引かないように暖めてやるさ・・・寒さなんて忘れるぐらいに、な?」



・・・それでも結局、知盛の行動を容認してしまう自分は、
もう知盛に浸蝕され切っているのではないかと、が真剣に悩んだとある冬の夜。











戯言。


はいごめんなさい、何がごめんなさいってわからないけど非常に謝りたい心意気です。
あんまりに連載?の方が上手く書けないものだから、
ちょこっと脇道に逸れてみただけだったのですがね、いつの間にかこんな話に。
これぐらい短い話だと、編集とかし易いんですが・・・難しいですね。

うちの知盛の基本スタンスは、『構って構って、でないと襲うぞ』らしいですね(←ナニソレ)
でも構ってくれても襲うという・・・なんてやつ!!(お前がな)

はマンションに父親と2人暮らししてるんですけど、
父親は高校入ったぐらいから、仕事で海外ばかり行っているという都合のいい設定です(笑)
年に2回くらいしか帰ってこないので、実質1人暮らしです。
なので知盛はしょっちゅうの家に入り浸っているという(笑)
たまに自分のマンションに、をお持ち帰ることもあるようですよ。

戦闘のときとか見てて思うのですが、知盛は脱ぐのも脱がすのも速いと思います(ぇ)
でもとりあえず、ドライヤーの使い方よりもなによりも、まずは将臣に避妊の仕方を教えて貰(自主規制)





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2005/11/16