routine if … Ver.M/A 〜もしも将臣だったら〜 ピンポーン。 と将臣の関係は、晴れて幼馴染から恋人に昇格したけれども 2人の私生活には、今までとほとんど変わりがない。 今日も今日とて、将臣はほんの少しだけ早起きをして、をマンションまで迎えに来ていた。 「・・・起きてるわけ、ないか。」 チャイムの音が完全に消えると、将臣はそう呟いて、予め預けられていた合鍵を使い、マンションの扉を開けた。 ガチャ、と錠の外れる音がして、薄暗い室内に光が差す。 そのまま真っ直ぐの部屋に向かい、軽くノックをしてドアノブを捻った。 「ん・・・」 パチッと電気を点けると、人の気配を察知したのか、微かに衣擦れの音がして、ベッドの上で何かが動く。 そのまま将臣は窓際まで歩き、眩しい太陽の光を遮断する分厚いカーテンと、シャッターを排除した。 薄い、レースのカーテンは、真っ暗だった室内に、 これでもかというほど日差しを取り込み、未だベッドで眠りこけているの横顔を照らす。 「おい、起きろ・・・朝だぞ。」 「・・・・・・・・・・・・・・ん」 僅かにきゅっと眉を寄せて、声にならない声を漏らす。 あどけない彼女の寝顔は、以前から微笑ましく思うことはあったが 今の将臣には、それだけではないくすぐったさも齎している。 いつまで経っても変わらない、こんな彼女の寝起きの悪さに 安堵と呆れが一遍に巻き起こって、将臣は思わず苦笑した。 「ほら・・・起きろって。」 「ん、んん・・・」 ぺちぺちと、頬を優しく叩いても、はそう唸るだけで、瞳を開けようともしない。 これが休日かなにかなら、将臣も口ではしょうもない奴だとか言いながら、 目一杯甘やかして、ゆっくり起こしてやりもするのだが、生憎今日は平日の月曜、そうもいかない。 仕方がなしに、来る途中で買ってきた、コンビニの袋の中から の大好きなみかんのジュースのパックを取り出すと、 彼女がしっかり被っていた布団を剥いで、パジャマの上着の下からそれを放り入れた。 「うひゃあああぁぁぁッ!?」 すると途端は、色気もなにもない悲鳴をあげて、がばりとベッドから跳ね起きた。 ゴトリ、とフローリングの床に、ジュースのパックが落ちた音がする。 「おはようさん。漸くお目覚めか?」 そんな彼女の肩に手を置き、どうどうと落ち着かせると、 冷静さを取り戻した彼女が、その綺麗な緑色の瞳いっぱいに将臣を捉える。 「オミ・・・・・・おは、よぅ・・・」 ふにゃっとした笑顔を見せたは、自分を起こしたのが将臣だと知ると、 またとろんとした瞳に戻り、今度は将臣の肩に頭を乗せて、もう1度眠りに就こうとする。 「こらこら、寝るな。学校行くんだぞ。」 立て立て、と膝の裏を軽く叩くと、は将臣の体を支えにして、どうにかこうにか立ち上がった。 けれど立ち上がるだけで、はそれ以上なにもしようとしない。 なにか出来るほどには、まだ覚醒していないのだ。 拾ったみかんジュースにストローを差して、それを銜えさせてやると やっと少しだけの目は覚めたらしく、自分でパックを持ってジュースを飲み始めた。 ズルズルとジュースを啜っているを、肩に引っ掛けたまま 将臣は壁に掛かったハンガーに、吊り下げられている、 見慣れた制服のスカートの裾を引っ張って、パチンと外す。 「ほら、左足あげろ。」 「ん・・・」 は相変わらず、のろのろとジュースを啜りながら、それでもしっかりと、自分の意思で足を持ち上げた。 次は右足と交互にあげさせて、なんとか腰の位置までスカートを上げる。 ホックを止めてファスナーをあげ・・・こんなことをされてもはまだ、 将臣の肩に寄りかかって、呑気にジュースを飲んでいる。 ・・・信用されているということなのだろうけれども、 喜ぶべきなのか悲しむべきなのかわからなくなって、将臣は軽い溜息を吐いた。 するとそれまでぼんやりしていた筈のが、敏感にそれに気が付いて 声は出さないまま小首を傾げ、“どうしたの?”と将臣を見上げた。 将臣はただでさえ、のこの上目遣いに弱い。 それなのに、首を傾げた拍子に露わになった白い項が、将臣の瞳を否が応にも惹きつけて離さない。 顔に血が昇ってゆくのを感じて、将臣はうっと唸った。 今まで近すぎて見えなかったものが、 異世界へ流されたことで見えるようになって、困ったといえばこれも困ったことの1つだ。 久々に再会した幼馴染が、こんなにも儚かったかと思う。 意識していなかったものを意識するようになって・・・ いつの間にかを、幼馴染だというだけではなく、女として認識していた。 将臣が動けないでいると、は不思議そうにしながらも 片手で彼の胸を押し、ふらふらと危うい足取りで歩き始める。 そうして机の近くにある、洋服箪笥の傍まで歩いて行くと、 机の端に、飲みかけのジュースを置き、のろのろと着替えを始めた。 イスの背凭れを支えに、パジャマのスボンを脱ぎ、 箪笥の引き出しから取り出したハイソックスを、椅子に座って足に通す。 が動く度に、ちらりちらりと除く脚線美は、将臣にとって目の毒としか言いようがない。 見ては駄目だと思うのに、どうしてもそちらに目が向いてしまう。 靴下を履き終えたは、そこでみかんジュースをひとくち口に含んだ。 余程おいしかったのか、ついでに唇の端をひと舐め。 それから、前合わせのパジャマの一番上のボタンに手を掛け・・・ そこでふと、まだ将臣がこの部屋に留まっていることに気が付いた。 いつもなら、とっくに部屋から出て行っている頃だ。 は椅子に腰掛けたまま、また不思議そうに首を傾げた。 指に絡めると心地よく纏わり付いてくる髪が、さらりと零れて彼女の首筋を伝う。 零れたそれは、苦しくないよう少し大きめに開いたパジャマの襟元から、するりと中に滑り込み・・・ ――――――――― ゴクリ。 漸く動き出したと思ったら、部屋を出て行くでもなく、かえって距離を詰めてきた どこか思いつめたような表情の幼馴染に、はやっぱり首を傾げて。 椅子から立ち上がると、男とは違う細く頼りない指で、将臣の制服の袖をそっと掴んだ。 「将臣?どうかした・・・?」 ・・・あぁもう、こんなときに限って名前で呼ぶなよ。 まるでそれが、彼女の責であるかのように内心謗り、 けれどこの感情に逆らう気力など、当に失せている自分に気付く。 ここまでくればもう自棄だ・・・なるようになれこの野郎。 不意打ちで、彼女の体を勢い良く抱き寄せる。 ともすれば折れてしまいそうなくらいに細いの体を、けれどやんわり抱き締めてやるだけの余裕はない。 「・・・っ」 ありったけの想いを詰め込んで、彼女の名を呼んだ声は、 思った以上に掠れていて、少しだけ情けなくなった。 そうして、苦しそうに身を捩った彼女の手を引き、そのままベッドに逆戻り。 窓から差し込む太陽の日差しから、彼女を隠すように組み敷いて 思いのほか強く握ってしまったらしい、ほんのり赤くなった手首に口付ける。 シーツに散らばる髪、乱れた衣服・・・普段はお目に掛かり難い、扇情的なその姿。 見れば見るほど毒にしかならなくて、鼓動が速くなる。 「・・・なに?」 けれどそんなことをしても、彼女が平然とそう尋ねてくるのは やはり異世界で彼女の面倒を見ていた、あの男の影響だろうか? そう思うとちょっとだけむっとして、つい眉を顰めた。 それに気付いたの指が、気遣うように眉間をなぞる。 「将臣?」 僅かばかり残っていた理性が、良心に訴えストップをかけたけれど、 それが己の欲望と鬩ぎ合ったのも束の間。 自分を呼ぶの声に、いとも簡単に吹き飛ばされて消えてしまった。 ・・・しばらく逡巡したのち、吐息を吐きかけるように、彼女の耳元に囁きかける。 「――――――― ・・・悪ぃ、今日学校連れて行ってやれそうにねぇ。」 そう言った将臣に、はやんわり微笑んで見せて、そのまま甘えるように、両腕を首にまわしてきた。 その仕草に将臣の欲望は加速され、引き千切る様に外した第一ボタン。 そうして露わになったの首筋に、迷うことなく顔を埋めて、その白い肌に噛み付いた。 なにも変わらない、変わらないとばかり思っていたけれど どうやら自覚がないだけで、変わったことも随分あるらしい。 ――――― ・・・たまに2人が、こうして揃って学校をサボるようになったのも、変化のうちのひとつなのだろう。 |
|
戯言。 やっちまいましたー(笑) 初めてです、初めて将臣書きましたよお母さん!(誰) 寝起きにふと思いついたネタだったのですが、結構具体的だったので書き起こし。 Life x Love x Liveシリーズ?の、ルーチン将臣編です。 お相手が知盛じゃなくて将臣だったらどうなるかってお話ですね。 当然の如く、知盛はお持ち帰りされてません。 知盛には駄目って言うくせに、自分はこんなです将臣(笑) 気まぐれで書いた将臣夢だったんですけど、こんなのは駄目でしょうか、ね・・・? |
BACK |
2005/12/03