彼の者の名は Eins 『その人達を殺したら!私がお前達を殺してやる!!』 戦う力を何一つ持たない女は、ツヴァイ達の前に立ちはだかってそう言った。 その瞳はギラギラと険悪な光を宿し、怯むことなくこちらを見返している。 ―――――――― その瞬間、ツヴァイは悟った。 この魂を一飲みにしてしまうのは惜しい、と。 それだけでは勿体無い・・・たった1度しか、味わえないのでは。 ―――――― 喰イタイ。 とても静かな。水面のような闇の中で、ツヴァイは考える。 すぐに喰らい尽くしてしまうのが惜しいなら、どうしたらいい? あの綺麗な魂の、咆哮にも似た旋律を堪能するには? 喰イタイ、喰いたい、もっと、もっと・・・!! そうとなれば、ツヴァイの行動は早かった。 彼は、自分の純粋な欲求のみに突き動かされる。 どうも警戒心の足りないあのシビルを、闇に潜み攫うのは、ツヴァイにとって動作もないことだった。 暗い、暗い闇の中。 人間の領域でない場所など、探せばこの村には腐るほど存在する。 もしツヴァイの単独行動に気付いた者がいても、すぐにはこことわからないだろう。 何事かを喚き、意味のない抵抗を続けるシビルの身体をゆっくりと、 しかし拒絶は許さず、湿った土の上に押し倒し、まずはその五月蝿い唇に喰らいつく。 それでも尚、抵抗を見せるシビルの様子に、ツヴァイは満足げに嗤って、服の裾から手を差し入れる。 そして白く、吸い付いてくるようなシビルの肌の上を、満遍なく這わせた。 そうするうちにやがてツヴァイは、己の手がある特定の部分に達すると、 シビルの身体が跳ねるように反応するのに気付いた。 ツヴァイはあまり感情の表れない顔に、珍しく楽しげな笑みを浮かべると、 必死に何かを耐えているような表情のシビルを見下ろして、そこを執拗に攻め始める。 シビルが、切り裂かれたかのような悲鳴をあげるたびに、泣き叫ぶたびに。 彼女の魂もまた戦慄し、苦しみ、嘆く。 そんな魂の叫びを、旋律を。ツヴァイはうっとりと聴いていた。 シビルの魂はこれほどにも泣いているのに、彼女は時折瞳が合うと、 迷いも怯えも欠片ほどもない、あのときのような眼差しでツヴァイを睨みあげる。 ―――――――― これはもう、堪らなかった。 彼女の魂の嘆きが、悲鳴が、憎悪が、絶望が。 ツヴァイを感じたことのない高みへと導く。 追い詰めているのはこちらである筈なのに、追い詰められているような気さえする。 ・・・そんな感覚は、初めてだった。 「いやああぁぁぁぁ!!!」 珠紀が悲鳴をあげ、譫言のように誰かの名前を呼ぶのを聞きながら、ツヴァイは思う。 やはり、簡単にこの魂を喰らってしまわなくて良かった。 もっと、もっと。堪能したい、喰らいたい。・・・この美しい魂があげる悲鳴を。 泣き、叫び。助けを求める心の揺らぎようが、どうしようもなくツヴァイをそそる。 もっと、もっとゆっくりと、時間を掛けて感じていたい。 ・・・そうすれば。頭の奥で響いている、誰かの声から耳を塞げる筈だから。 『――――――――― コンナ風ニ、泣カセタイワケジャナイ。』 |
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戯言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・えへv(←えへじゃねぇ) もう本当に、勢いだけで書いてしまいました。マイナー上等、ツヴァ珠です。 一応、『彼の者の名は』は、4話で終わる予定です。 珠紀がツヴァイの中に誰かを見つけてから、それを探し出すお話・・・かもしれません(かもってお前) とりあえず、暗めにエロくを目指した筈だったのですが、 書いているときはノリノリだったのに、読み返してみるとそうでもなくって、任那が泣きそうです(凹) でもまぁ、心行くまで書けたかもしれないのでいっかぁと思う次第です。 |
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2006/08/15