ここはフラット。 聖王国領地の辺境にある、サイジェントの街の孤児院である。 サイジェントはキルカの織物が特産物の、のどか(?)な街だ。 バン!バン!!バン!!! 「トウヤーーーッッ!?(汗)」 ・・・のどかな・・・ ズギューン!! 「うわーーッ!?」 の、のどかな・・・ 「・・・チッ!!ちょろちょろするな、ハヤト!!じっとしてれば直ぐ終わるからッ!!」 「じっとしてたら、お前撃つだろッ!?」 「当たり前だ!!」 のどか・・・じゃないかもしれない・・・ ギィ・・・ 「・・・どうかしたかい?ハヤト。僕は今、新聞を読むのに忙しいんだけど。」 「どうかした?・・・じゃないだろーーーッ!?どうにかしてくれよ、コイツ!! どうにか出来るのトウヤぐらいじゃないか!!」 「・・・そう言われても・・・」 「頼むから!!」 「――――――――― ・・・掃除当番代行一回。」 「解った!解ったから早く!!」 「、そろそろやめてあげたらどうかな?」 ピタリ。 「はい!会長!」 「どうしてお前はそうなんだよッ!(涙)」 〓 第1話 サイジェントの町にて 〓 時刻は昼少し過ぎ。 普段みんなが集まる広間には、今は三人だけしかいなかった。 他の住民は、みんなそれぞれの用で外に出ていたのである。 一人は、年の割りに落ち着いた雰囲気を持った青年、トウヤ。 もう一人は明るそうな、少し茶色い髪をした青年、ハヤト。 ・・・そして最後の一人は濃い黒、というよりは紫色の髪をした 背の高い少女・・・。 彼女が先程の銃声を発していた、張本人である。 今は何かやり遂げた、満足そうな顔をして。 他の二人と同様に、のんびりとコーヒーを飲んでいる。 この三人に、あと二人。 いかにも活発そうな少女、ナツミと 温厚で礼儀正しい少女、アヤを加えた5人は1年ほど前に。 ひょんな事から、事故でこの異世界“リィンバウム”に召喚されてしまったのだった。 ふぅ、と溜息を吐いて。トウヤが口を開く。 「・・・それで、さっきはどうしてハヤトを追い掛け回していたんだい?。」 「そうなんです。聞いて下さいよ、会長!」 ハヤトを追い掛け回していた時とは打って変わった調子で、トウヤに話しかける。 実はとトウヤとナツミ。そしてハヤトとアヤは、それぞれ同じ学校に通っていた ごくごく普通(性格云々は別として、身分は。)の高校生で トウヤが生徒会長、が補佐役として副会長を務めていたのだ。 だからは異世界に来てからも、未だにトウヤのことを“会長”と呼ぶし 何故か破天荒な性格のも、 トウヤにだけは丁寧な言葉を使い(比較的)、言うこともきちんと聞く。 ・・・同じ学校出身のナツミに言わせると 『あの子は前からああだよ。』 とのことである。 「実はさっき、二人で商店街に買い出しに行ってきたんですけど まぁた北スラムの連中に呼び止められちゃいまして・・・」 ―――――――― ・・・北スラム。 サイジェントにある貧困街は、町の南と北に、二つ存在する。 南にあるのはご存知フラット。 行く場所のない、子供達が中心になって生活している。 そして北にあるのが、いかにもガラの悪そうなゴロツキ共の集団 オプテュスの本拠地である。 それを仕切っているのが、リーダーであるバノッサと、その義弟のカノン。 フラットとオプテュスは、以前から対立していたが 1年前達の出現によりフラットが優位に立ち、 今では町の人達も、フラットに任せておけばそこまでの被害は出ないだろうと踏んでいるほど。 昔からは考えられないほどの変化だ。 トウヤはそれを聞いて、顔を顰めた。 「・・・また、かい?」 「そうなんですよ。それで・・・」 ・・・数十分前、北スラム、オプテュスの本拠にて。 『なんでこのがッ!!お前が地団駄踏んで我儘言って手に負えないからって 毎度毎度こんなとこまで呼び出されなきゃなんないんだよ、バノッサっ!?』 『あぁ?俺がそんなの知るかよッ!?俺は一言も、お前を呼んで来いだなんて言ってねェんだよ!!』 『あんな風に道の真ん中で、泣きながら土下座されたら いくらでも断れるワケないだろがッ!』 実は頼み込まれると断れない性格らしい。 『・・・まぁまぁ、。少しは落ち着けよ・・・』 『そうですよ、バノッサさんも。あんまり叫ぶと喉が痛くなっちゃいますよ。』 『『うるっさいッ!!』』 (ステレオ) 『・・・全く、なんでお前はそう子供なんだ!?よりも年上だろ!?』 『フン!このガキ。』 『・・・そのガキに説教されてるのはどこの誰だ?』 『あぁ!?誰が、いつ、ポワソが何回召喚された時!お前に説教されたってんだよ!?』 『バノッサが、今!リィンバウム中でポワソが今日274匹・・・ 今月総計1万3641匹召喚されたときだ!!』 バチバチバチ・・・ッ!! (火花が散る音) なんて低レベルな・・・!!(汗) 『あのなぁ!少しは大人になったらどうなんだ!? お前の舎弟どもが哀れだろ!?全ッ然成長の無い奴だな!!』 『ハッ!それだけはお前に言われたくねェな!!お前こそ、ずっと成長してねぇだろうが・・・・・・ その貧相な胸ッッ!!!』 ぷち。 『バ、バノッサ!!それだけは・・・!!(ビクビク)』 『フ、フフフフフ・・・・・・!!』 『・・・ッッ!?』 『!?』 『それを言ったな!?いい度胸だッ!!!死ねッッ!!ゲルニ・・むぎゅ!』 『わーッ!!わーーッッ!!(汗) こんな所でそんな大きな召喚術使わないでくれよ!!頼むからッ!!』 『バノッサさん!お姉さんになんてこと言うんですか! 謝ってください!!・・・オプテュス壊滅させる気なんですかッ!?』 『な、なにしやがるカノンッ!?俺は絶対あのはぐれ野朗になんか謝らねェ・・・!! 第一、アイツの胸が貧相なのは本当のことだろうが!本当の事を言ってなにが悪ィ!?』 『バノッサ(さん)っっ!!』 バンバンバンバンバン!! 『あーもーッ!!もッ!見境無く銃乱射しないでくれよッ!(泣)』 『むーッ!ふむむむ、むむーーッッ!?』 『わかった!・・・わかったから帰ろうな!帰ったらなんでも話聞いてやるからさ! ほ、ほら!トウヤも待ってるし!!ほら、行くぞ!!(焦)』 『むーーーーーーッ!!!!』 「・・・って。酷いんですよ、あの馬鹿。」 「・・・そのあと俺に八つ当たりしたの方が、ずっと・・・」 「煩い。黙れ。」 「・・・・・・ハイ(汗)」 トウヤは表情を崩すことなくの話を聞いていたが、ふと顔を上げる。 「・・・それは酷いね・・・」 その一言に は瞳を輝かせ、ハヤトはげんなりとした表情でトウヤを見た。 「そうッスよね、そうッスよね!!これはやっぱりリンチでしょう!?」 物騒なことを笑顔で言うな。 「トウヤ・・・あんまり下手なこと言わないでくれよ。」 どうせ尻拭いさせられるのは俺なんだから・・・ 「、いざとなったら僕がバノッサを異界(何処ッ!?)に還してあげるから。 だからひとまず買ってきた物を冷蔵庫に閉まってきたらどうだい?(爽)」 責任はハヤトが取ってくれるらしいからね。 やっぱりそうなるんだな・・・(鬱) 「あ、そうですね。食品もありますし、随分無駄な寄り道しちゃいましたから。」 しまってきます。 はハヤトにここまで持たせて来た荷物を、台所にいそいそと運んで行った。 取り残されたのは、男二人。 「・・・・・・。」 「・・・・・・。」 トウヤがおざなりに読んでいた新聞を折りたたみ (難しいこっちの文字は読めないので。) もう半分くらいにまで減って、冷めかけたコーヒーを一口含んだ。 がいなくなったことで予想以上に静かになった部屋で、ハヤトは大きな溜息を吐く。 「・・・全く、バノッサも本当に子供だから困るよなぁ。もう少し、素直になればいいのに。」 「そうだね。減点マイナス10ってところかな? ・・・はああ見えても、意外と溜め込む性格だから、 これじゃあうちのはあげられないな。」 「・・・トウヤ、の両親の代わりでもやるつもり?」 「必要とあらば、ね。もとはと言えば、 彼女は僕を探しに家を出て、こちらに呼ばれてしまったんだし・・・。」 そう、は夜になっても家に帰らず行方不明になってしまったトウヤを トウヤの親から連絡を受けて探しに出て、そのまま。 ・・・リィンバウムに召喚されてきてしまった。 少しのタイムラグがあって が現れた時には、 とても驚いたのを、今でも覚えている。 もし、僕を探しに家をでなければ。 はこちらに召喚されることなく、元の世界で暮らしていけたかもしれない。 ・・・そう思うたびに。 視える筈のない可能性が、首をもたげる。 ・・・勿論それは、直接自分の責任ではないだろうし、 自分の親の責任でもない。 紛れもなく、トウヤを探しに行くことを選んだ、彼女の責任で・・・ ・・・まぁ、少なくとも。 正面きって聞いた事はないが、ならばきっと。そう答えるだろう。 でも、それでも。 ハヤトはトウヤの表情が曇ったことに気が付いて トウヤがのことに関して多少の・・・罪悪感を抱いていることに気付いた。 「・・・・・・あ、ごめん・・・」 思わず声に出してそう呟くと、トウヤは苦笑いから 感情を読ませない、いつもの笑みに素早く張り代えた。 「・・・それぐらいの責任は、親御さんに代わって取るつもりだよ。」 「そっか・・・。」 「まぁ、ハヤトとバノッサならどっちもどっちだろうから頑張ってくれ。」 「は?」 冷や汗をダラダラ流しながら、ハヤトがその真意を聞き返そうとしたが トウヤは、笑みを絶やさぬまま。 トウヤ、それはどういう意味で言っているんだ? まさか。・・・まさか・・・ しかしその疑問は、バタバタという 特有の足音に遮られ ハヤトの口から発される事はなかった。 「会長。」 「なんだい?」 「・・・そう言えば、 とモナティ&ガウムどこにいます? 買出しに出る前、部屋の掃除頑張ったって言うんでお菓子買って来てやるって約束したんですけど・・・」 モナティ&ガウムって・・・(汗) 「あぁ。あの三人なら、部屋の掃除が終わったからって 今度は庭の掃除をするって張り切っていたけど?・・・庭にいるんじゃないかな。」 ・・・っていうかトウヤさん、それ笑って眺めてたんですか? そんなことあるわけないだろう?よくやったと奨励していたんだよ。(爽) このサボリ常習犯め。 「そうッスか、解りました。行ってみます。」 はそう言うと、固まったハヤトなど気にも止めず お菓子の入った袋を抱えて庭へ出て行った。 が庭に向かっていた頃。 ところがどっこい、 とモナティとガウムの3人(?)は アルク川のほとりで、のんびりと日向ぼっこをしていた。 顔も知らないお父さん、お母さん。お元気ですか? はとても元気です。 今までの記憶も、お父さんとお母さんの顔も。 全部忘れて、リィンバウムに召喚されてしまいましたが、今では楽しくやっています。 フラットのみんなも、オプテュスのみんなも、金の派閥のみんなも サイジェントの町の人は、みんな優しいです。 そうそう、と同じ世界から来てる人も フラットには5人もいるんです。 みんなに色々教えてくれて、良くしてくれます。 ・・・だからは大丈夫です。 不安なこともいっぱいありますが、まだまだ頑張っていけます。 ・・・でも、でも・・・ いつか・・・ お父さんやお母さんの顔くらいは、思い出したいと思っています。 そこまで思って、 はむずがゆいような、嬉しいような。 なんだか暖かい気持ちになって、思わず口元を緩ませた。 「 さん、何考えてるんですの?・・・すごく幸せそうな顔してるですの〜」 隣に座っていたメイトルパ出身の亜人、モナティが そんな に声をかける。 「えへへ、そうですか?実は、心の中で お父さんとお母さんに手紙を書いていたのですよ。今は楽しくやってますって。 ここからじゃ、のいた世界には届かないけど・・・伝わったらいいなって思っていたのです。」 「じゃあ、モナティもメイトルパのみんなに、心の中でお手紙を書くですの〜。」 バノッサ辺りが聞いたら馬鹿にしそうな些細なことだったが モナティはそれを聞いてにっこりと笑った。 「・・・届くといいですの。ね?さん。」 「はいなのです!」 も、モナティにつられて笑顔になる。 モナティの横にいた、モナティと同じくメイトルパからやってきたガウムも 楽しそうにキューキューと声をあげている。 ガウムの言葉は には理解できないけれど なんとなく、一緒になって自分達の想いが届くよう、願っていてくれる気がした。 言語が違っても、例え言葉を話せなくても、気持ちは伝わるんだ。 そんなことに、 はリィンバウムに召喚されてから気が付いた。 どうしてそんな簡単なことに、今まで気が付けなかったんだろう? アルク川のほとりを通り抜ける風は爽やかで 世界を照らし出す太陽は、ほかほかと心地よい。 自分と同じ生命は、自分と同じことを、今。感じている筈だ。 「もふぁああ〜・・・。それにしても、いい気持ちですねー。」 は奇妙なあくびをして、バタンと草の上に倒れると、太陽の光に当てられて いつもよりも茶色く見える自分の髪をもてあそぶ。 「はいですの〜。これだけ気持ちがいいと、眠くなってしまうって ガウムも言ってますの〜。」 「キューー!」 も、やトウヤと同じく リィンバウムで未だ解明されていない異世界、“名も無き世界”の住人だ。 けれど彼女の場合、ハヤト達がこっちに来るきっかけとなった事件とは関係なく 全く別の時期にリィンバウムに迷い込んできた。 こちらの世界に召喚されてきたところをたまたまに発見され そのままフラットの、新たな居候となったのである。 今思えば、あの時同郷のに発見されたことはとても運が良かったのかもしれない。 もし、他の人だったら・・・場合によっては、どうなっていたか知れない。 と言うのも、リィンバウムには未だ冒険者などもたくさんいて その中にはとてもガラのよろしくない人達や悪人も、大勢いるらしいのだ。 また、心無い召喚師によって、悪用されたり、捨てられたりしてしまう召喚獣も多い。 今こうしての隣にいるモナティとガウムも、実はそんな人間の被害者である。 それに、 達のような“名も無き世界”から召喚された召喚獣は どの属性の召喚術も使う事が出来る。それは召喚獣の中でも特殊で、珍しいそうで・・・ 『外道召喚師とか、バイヤーに捕まったら最後だからね。 あまり言ってまわるんじゃないよ?でないと研究材料にされちゃうかもしれないからね?』 と、厳重な注意を促された。 はまだ、金の派閥のイムラン、キムラン、カムランの三兄弟と ソル、キール、カシス、クラレットの7人しかきちんとした召喚師を見たことはないのだけれど ・・・召喚師というのは、そんなに怖い人達なのだろうか? 自分も召喚されたのだろうから、理論的には召喚主である召喚師がいるはずなのだが・・・ 真面目な方向に思考が向かいかけたが、それが余計眠気に拍車を掛けた。 ・・・今まで何度も考えたけれど、いくらが考えても結論は出ないことなのだ。 「・・・あぁ、眠ってしまいそうなのですよ・・・」 「モナティもですの・・・」 「・・・キュー・・・」 3人がつい、ウトウトし始めたとき一つの影が川岸に姿を現した。 「こら、3人とも!庭の掃除ほっぽらかして何やってんだ?」 太陽の光が遮られて、の上に影が出来る。 逆光で良く顔の見えない相手が誰だか解って、は慌てて飛び起きた。 「うへぁッ!?!!」 「マスター、お帰りなさいですの〜」 呑気に返事を返すモナティに、 が軽く溜息を吐いて答える。 「・・・お帰りなさい、じゃないだろ?会長から庭の掃除やってるって聞いたから行ってみれば ホウキだけ残していなくなってるし・・・ 折角、約束通りお菓子買ってきてやったのになぁ?全部アルバ達にやっちゃおうかな・・・」 お菓子の大好きなモナティとはビクっとして、必死にお菓子奪回に乗り出した。 「はくぅッ!?忘れていたのですッ!?そ、それに掃除をさぼってたワケじゃないのですよッ!?」 「そうなんですの〜。マスター、モナティ達は悪さをした子達に お仕置きをしに行ってたんですの〜。」 だからお菓子欲しいですの〜〜〜っ!! 「お仕置き?」 「キュー!」 問い返すに、ガウムが返事をするように一声鳴き は解らないと言った様子で首を傾げた。 「そうなのです!モナティとガウムとお掃除してたら、 町の人達がフラットまで来てですね、野生化したはぐれ召喚獣が暴れてるから どうにかして欲しいって言うんで、3人で追い払ってきたのですよー。」 えへん!と誇らしく胸を張っているとモナティを見て、は・・・ (ガウムは見ても何をしているのか良く解らないのが現状だ。) 、モナティと同じレベルでいいのか・・・? コイツ、達と大して年変わらないよなぁ? と思ったが、それを口にするのはやめた。 「3にんだけで?どうして他の人達呼ばなかったんだ? 少なくとも会長はいただろ?」 会長に任せておけば、凶暴化したはぐれなんて 100匹も1000匹も同じようなもんだよ。 いや、そんなにいないんで・・・(汗) の問いに、はほわ〜っと微笑んで 「もハヤトも帰ってきてたんですけど、聞こえなかったみたいで。」 って言うかお取り込み中だったんで。 アレに巻き込まれるくらいならはぐれを1000も2000も相手にしていたほうが まだマシなのですよv(にっこり) ちょっとアレとは関わり合いになりたくないですの〜v どうやら丁度、 がハヤトに対して発砲していた時のようです。 「・・・まぁいいけどさ、怪我はしなかったのか?」 モナティはともかく、は実戦経験少ないんだから。 言葉にはされなかった裏の意味を、は悟った。 ハヤト達が召喚された時期は ・・・まぁ、色々あって、5人は戦うことを強いられた。 それこそはぐれ召喚獣から、高い知能を持った高位の召喚獣から ――――――――――― ・・・人間までも。 けれど。はサイジェントでの一連の事件が、一段楽してからリィンバウムにやってきた。 だから、他の5人に比べて経験も、技術も浅く・・・。 がまず教わったのは武器の扱い方。 凶暴なはぐれ召喚獣や、なにやら怪しい事をやっている人間から身を護る術だった。 ・・・この世界の常識から、戦闘に関する技術。そして、召喚術の知識まで。 5人を中心としたフラットに住んでいる人々は生きてゆく為に、に様々なことを教え込んだ。 その為に、は一通りの武器を扱えるまで・・・ 最初とは比べ物にならないくらいの上達を見せ 今ではレイドや騎士団のイリアスとも、まともに打ち込みの相手が出来るほどになった。 ハヤトには、剣の扱い方を トウヤには大剣を相手にする時の立ち回りを (流石に持てなかったので。) アヤとナツミには短剣の使い方を には拳銃の使い方を 4人の召喚師達には、召喚術の使い方を 色んな武器を操り、防ぐ手段を。 ・・・それでも未だに、は戦うことに慣れない。 あの肉を切り裂くときの、断つときの感触が おぞましい。自分が他の命を断つということが、恐ろしくて堪らない。 上達はしたのに、いざ実戦となると足が竦んで動かなくて気を失ってしまう。 流石に今はもう、気絶をしたりはしなくなったが。 そう以前、ナツミとアヤに言ったことがある。 『でもさ、それはある程度仕方ないよ。 日本じゃそんなことする必要なかったんだし、ほとんどの人がしたことないじゃん。』 『そうですね。こればっかりは、どうにもなりませんし・・・』 思えばあの時のは馬鹿だった。 そう言った二人に、こう問いかけたのだから。 “二人は、どうして立ち向かえるのですか?どうして怖くないのですか・・・?” 『別に、あたし達だって怖くないわけじゃないよ?。』 『私達だって、今でもあの感触には慣れません。 けれど、それが必要だった。それしか道が無かった。 あのときの私達には、そうしなければ死しかなかった。何も護れなかった。 ・・・ただそれだけのことなんです。私達も・・・“怖い”んですよ。』 『それに殺すことに“慣れた”人間になんて、絶対ならないほうがいいって。』 『ええ・・・私も命を奪うことだけには、決して慣れたくありません。 それに、それは私達だけじゃない筈です。』 『そうそう、ハヤトもトウヤもも。本当は怖いんだよ。』 “怖いんだよ。” その言葉が、印象的だった。 だから、今でもはハヤト達と比べてもずっと、戦う事が苦手だ。 いつも実戦では後方の援護にまわっているから・・・多分。 はそんなを心配したのだろう。 そんな を安心させる為に、はいっそう笑みを深めて Vサインまでして見せた。 「大丈夫なのでーす!このとーりピンピンしてるですよ。 それに追い払っただけなのですし。」 「スライムさんでしたのー。」 「そう!モナティが大活躍だったのですよv 凄かったのです、にも見せてあげたかったのですよー!!」 「キューキュー!!」 がへぇ?と感心したように聞き返すと、モナティは少し照れながらこう言った。 「モナティ、片手で捻り潰してやりましたの〜v(にっこり)」 ――――――――― ・・・そ、そうか(冷や汗) はちょっとだけ冷や汗を流すと ゴクロウサマ と、お菓子の入った袋を3人に手渡した。 「やったのです!お菓子ゲット!なのですね。」 「あ、モナティこれが食べたいですの〜。」 「キュ!」 さっそく食べ始めた3人を見て、は呆れながらも その様子を微笑ましそうに眺めていた。 「・・・そういえば。」 「あ?なんだ?」 「帰りに商店街通ってきたです。そしたらバノッサが暴れてたですよ? 放置してきたですけど・・・また何かあったのですか?」 「なんでに聞くんだ。」 いや、もうそれが関係あるって答えになっているのですけどね?(汗) 「う゛・・・それは・・・」 が言い難そうにしていると、口の端にお菓子の粉をつけたまま、モナティが口を開く。 「それはもう、バノッサさんときたらマスターと決まってるですの〜。」 はがそれはもう、鬼神のごとく怒り狂うんじゃないかと思ったのだが 意外も意外。は溜息を吐いただけだった。 「・・・そんな連想されてるのか?は・・・(諦)」 「あ、あれ!?どうしたのですか!?いつもならこれでもかってくらいに 怒るですのにッ!!具合でも悪いのですかッ!?」 オイコラ。 「ほほぅ・・・?」 の発言に、 がピクリと眉を吊り上げた。 し、しまったなのですよーーーッ!!(汗) 瞬間、死を覚悟(そんなにか)しただったが・・・ 「・・・なんてな。」 「ほへ?」 「いや、もう今日はさ・・・」 さっき散ッ々ハヤト追い掛け回したから、もう疲れた。 そこかよ。 は、心の中で今日の功労者、ハヤトに拍手を送った。・・・合掌。 も一緒に並んで座り、すっかりくつろぎ始めた頃、 (まで疲れたとか言ってお菓子を貪り始めた。) がいつも首から提げている 霊属性のサモナイト石のペンダントが、淡い光を放ち始める。 それに気が付いたとは、不思議そうにサモナイト石を覗き込む。 「なんだ?どうした?」 「なにか、ソワソワしてるみたいなのですー・・・」 サモナイト石の中にいる召喚獣が何かを伝えたがっているのは解るのだが 何を伝えようとしているのかまでは解らない。 やは名も無き世界からきたせいか。 何故かは解らないが、だいたいの召喚獣と意思の疎通が出来る。 それは言葉ではないのだが、なんとなく相手の気持ちが伝わってくる、そんなもの。 けれど、今回は“声”がノイズのようになってしまって なんと言っているのか聞こえない。 ・・・まるで、なにかが邪魔をしているかのように・・・ 「これ、確かバノッサが契約したんだったよな?」 「そうなのです。バノッサがくれたのですよ?」 “中身はレヴァティーンか・・・” はまだ、高位の召喚術は使えないから このサモナイト石が何と契約しているのか解らないらしい。 だから何を言っているのか、解らなくてもおかしい・・・ということはないと思う。 しかしはそんなことは無い。きちんとレヴァティーンだと見て取ることが出来るし、 特殊な仕事柄、サプレス関係は得意分野だ。 ・・・なんでバノッサが契約したクセに“声”が聞き取れないんだ・・・(苛) そして困ったように頭を掻いてから、腕を組んで諦めの溜息を吐いた。 「・・・仕方ない、さっきやらかしたばっかでカッコがつかないけど アイツに聞きに行くしかないんじゃないか?“なんて言ってるんだ?”って。」 契約主なんだから、わかるだろ。 っていうか、解らなかったら問題ありなのですよ。 「それしかなさそうなのですね。・・・モナティ、ガウム。 はとバノッサの所に行って来るですよ。だから先に帰っていてくださいなのです。」 「わかりましたの〜。」 「キュー。」 「あ、モナティ。ハヤトにが帰るまでにせいぜい休んでおけって言っといて。」 「はいですの、マスター。」 モナティとガウムが踵を返しかけ、 とも、北スラムに向けて歩き始めようとした ――――――――――― ・・・そのとき。 カッ!! 達の頭上一帯が、目を開けているのも辛いほどの、眩い光に包まれた。 「ふ、ふにゅーーー!!」 少し離れた場所で、モナティの叫び声が聞こえる。 どうやらモナティも、この光に身動きが取れずにいるらしい。 「な、なんなのですかッ!?」 「気をつけろッ!誰のものだか解らないが、強力な魔力の波動だッ!!」 の罵声がとぶ。 あまりにも強い魔力に、押しつぶされそうになりながら はじっと耐えていたが、ふと浮遊感を感じて声をあげた。 「ふひゃあああ!?」 の声には気を抜けばすぐに閉じたくなる瞳を、必死に開いた。 そして、今まで隣にいた筈のの体がそこにないことに気付く。 声に従って光の発生源へと、視線を動かす。 そこには、空中に浮かんだの姿。 は光の中心に吸い込まれるようにして、魔力に引き摺られていっている。 「・・・まさかッ!?・・・あれは召喚術ッ!?嘘だろッ!?」 の驚愕の声すらも、には届かない。 「はわわわわーーーッ!?ッッ!!」 「・・・っ !!」 「いや!いやぁーーーッッ!なんなのですかぁーーーッッ!! 降ろしてなのですーーーッッ!!!」 「マスター!さんッ!!どうしたんですのーッ!!」 モナティの声が、さっきよりも遠くに聴こえる。 それはそれだけこの魔力が強いということを意味していて・・・ 強い魔力は音さえも遮断してしまう。 ―――――――――――――――――― 光に飲み込まれるのは、怖い・・・!! 「嫌あーーーッッ!! もう、をどこにも連れて行かないでッ!!」 奪わないで欲しい。 ここが、やっと見つけた・・・・・・の居場所なんだから・・・ そこで、の思考は途切れた。 「ーーーーーーーーーッッッ!!!」 ・・・彼女を呼ぶ声だけが、虚しく辺りに響いた。 |
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戯言。 はい。ドリーム第一弾です。 この回は2人の主人公の紹介がメインなのですがどでしょかね。 これから本編ってゆーか、まぁそんなんなのが始まるのですが。 今回だけでもかなり疲れたので、ゆっくりゆっくりどうにかしたいと思ってます、はい。 |