とりあえず、盛大な勘違いをしてくれた敦盛や、 遠まわしに順を追って説明しろと要求している重衡に、これまでの事の次第を掻い摘んで説明した将臣は 頭の上に落っこちるという、非常に間の抜けた出会いから、 ほんの少し前まで、ちょっとした勘違いで男扱いされていたことまで。 洗い浚いヒノエについて、に口を割らせると、とあえず安堵の息を吐いた。 話を聞く限りヒノエという人物は、確かに少々女好きで遊び人風であるようだが、 それでもの面倒は、きっちり見てくれているらしい。 敦盛の言う、根は悪い奴ではないという言い方も言いえて妙で、頷ける気がした。 そのヒノエに、自分が無事だということを知らせたいのだとが言うと、 敦盛はなるほどと納得して、すぐに文を認めてくれた。 筆で文字を書くことを、放棄して久しい現代人には、 決して真似できない優雅さで、綺麗に・・・こう言っては悪いが、 将臣なんぞにはミミズが這っているようにしか思えない字で、敦盛が文字を連ねてゆく。 その敦盛の隣で、がああだこうだと口を挟み、 最後には、彼女自身もそこに一筆添えて、やっとヒノエ宛の文が出来上がった。 慎重に墨が乾くのを待ってから、等分に綺麗に折り畳み、早急に仕立てさせた早馬に預ける。 屋敷の中から、使者の出発する姿を見送っても、 まだどこかそわそわとして落ち着きのないは、余程気掛かりなことでもあるのだろう。 どういう理由があるのかはわからないが、 は自分を拾ってくれたというヒノエに、心配をかけるのを極度に嫌っているように見えた。 「・・・あっちゃん。どれくらいで、手紙はヒノエのところへ届くだろう?」 ・・・わからないといえば、の敦盛に対するこの態度もそうだ。 人見知りの激しさなら、は易々と、あの警戒心の高い譲の上を行く。 知盛は“ああ”だから仕方がないとして、あの一見温厚な重衡に対してすら、 程度は違うにしろ、初めはあれほど怖がって見せたのに、 敦盛に対しては最初から、微塵の恐怖も見せていない。 それどころかこうして、既に打ち解けているような素振りすら見せるのだ。 「そうだな・・・ここから熊野まで、早馬で飛ばせば4・5日程度。 遅くとも、7日ほどで着くのではないだろうか?」 敦盛がそう返すと、は少し視線を伏せて、 “4・5日・・・”と、その間すら惜しむように小さく呟いた。 ちょっと手元の携帯電話を操作すれば、遠く離れた場所に居ても 言葉を交わすことなど造作もない世界で生活してきた達と、この世界の人達と時間の感覚は少し異なる。 本来の世界で、それは電話やメールがあれば一瞬で済むもののだ。 だが電気もないこの世界に、そんなものがあるはずもない。 だからこの時代に人達にとって、然程我慢する程でもない時の流れを、 苦痛に感じてしまっても、仕方のないことではある。 けれどこういうとき、今までどれだけ自分達が、文明というものに溺れ、依存していたかを思い知らされた。 「・・・まぁ、こればっかりは俺たちがどうこう言ってもしょうがないことだからな。 やることはやったんだ、後は返事が来るのを待とうぜ?」 「・・・・・うん。」 ポンと肩を叩いて言うと、は一応頷いて見せたが、それでもまだ気は晴れないようだ。 ・・・表情から、不安が拭いきれていない。 そこへ、敦盛との間で何気なく交わされた会話の中に、 気になる言葉でも聞き留めたのか、首を傾げた重衡が、静かに割って入った。 「熊野・・・?殿は、熊野にいらっしゃったのですか?」 重衡が何気なく問うと、はハッとした様子で顔をあげる。 その表情には僅かではあるが、緊張の色が見て取れて、思わず眉を顰めてしまった。 「うん・・・そう、だよ?」 「・・・ほぅ?」 たった一言。けれどどこか、含みのある知盛の声に、今度こそが、目に見えてビクリと肩を震わせた。 恐る恐る振り返った、の視線につられるように、全員の注目が知盛に集まる。 ――――――――― ・・・それを受けて、知盛がクッと咽元で笑った。 その笑い方が癪に障ったのか、が珍しく眉を吊り上げて、キッと知盛を睨む。 「なに・・・?」 「水軍に所属しているとは知っていたが・・・まさかそれが、熊野水軍とはな。」 「熊野・・・水軍、だって??」 「――――――― ッ!?」 一瞬にして強張ったの表情が、知盛の言葉は真実であると物語っていた。 未来に出逢う過去の幻影 拾参 そのときの気分を言葉で表すなら、頭から氷水を浴びせられたような気分だった。 瞬間、脳が凍りついたように思考を止めて、とてもじゃないが生きている心地がしない。 自分だけしか知らない筈の秘密を、覗き見られたような気がしで、 背中の辺りをぞわりと、嫌な感じの焦燥感と悪寒が這う。 ―――――――――― ・・・この男は、一体どこまで知っている? 考えながら、思うところがありそうな知盛の顔を、は無言で睨み返した。 楽しげに、けれど決してに逸らすことを許さないその瞳は・・・なにを見ているのか。 は先程緩めたばかりの警戒レベルを、また引き上げなくてはならなかった。 「・・・どうしてお前がそんなこと知ってんだよ?」 するとそんなの態度から、知盛の言葉が真実だと察したのだろう。 将臣がの胸中を代弁するように、 聞きたくて、でもどうしても言い出せないでいた疑問を、言の葉に乗せた。 ・・・正直言うと、聞いてしまうのが少し怖い。 だがそれと同時に、今聞いておかなければいけない気もしていた。 「クッ、簡単なことだ・・・」 問われた知盛は、体だけは将臣のほうに向けながら、 顎に人差し指を当て、横目にを窺い見る。 体は将臣のほうを向いているのに、視線だけはを捉えたまま、 ちろっと覗いた彼の舌先が、唇の端をほんの少し舐めて 狙いを定める肉食獣のような仕草に、の体に無意味な緊張が走った。 彼の瞳の奥底に潜んでいる感情の波は、なにを考えているのか取り辛いその表情とは裏腹に、 思わず逃げ出したくなるほどの激しさを内包している。 それは足元からじわじわと、逃げ場を奪い、忍び寄ってくる水のように、 確実に、そして着実に。に何事かを伝えようとしていて・・・・・・ あまりに強過ぎる感情に、の頭はパニック寸前だ。 頭が理解しようとする前に心が、嫌だ、知りたくないと拒絶反応を起こして、思考回路が焼き切れそうになる。 そのままどこか、ここではない遠い世界に飛び立とうとする意識を、はどうにかこうにか繋ぎとめると、 なけなしの勇気を振り絞って、知盛の横顔を睨み付けた。 の反応に、知盛がニヤリと笑う。 ・・・・・・こうでもして強がっていなければ、流されてしまいそうだ。 とても静かに彼の中を流れている、感情の激流に。 「船から落ちた、と言っていただろう?余程高貴な身分であれば別だろうが、 水軍ででもなければ普通の人間が、そう易々と船には乗れまい。」 ・・・たったそれだけの事柄から、導き出した答えがアレだというのだろうか? だとすれば、ほとんど当てずっぽうで答えたことが、偶然的を射ていただけだ・・・そう、思うのに。 力を抜いた筈の肩は、それでもまだどこか強張っている。 知盛の言葉が、嘘ではないかと疑っている。 問いかけようとしている、本当にそれだけなのかと―――――― は自らの中に残る猜疑心に蓋をするように、何度も偶然だと言い聞かせた。 ・・・けれど、そんなの考えを見透かしたかのように、 知盛はあの含みのある声で、小さく――――― ・・・本当に小さく、面白そうに付け足した。 「・・・・・・それに。」 こういうとき、髪が長いというのは良いのだか悪いのだかわからない。 表情を隠すには好都合かもしれないけれど、体の震えで、風もないのに髪が揺れた。 「それに?」 問い返す将臣の表情を、恐る恐る覗き見る。 ・・・彼は、気付いていないだろうか? まだ源氏とは、なんら係わり合いないと言うのに、一体何に気付く? 時空を跳んでいること?将来熊野を、戦に利用できる可能性がここにあること・・・? 心配性な双子の妹よりも先に、大抵のことならなんでも話してきた、 兄代わりの幼馴染に話せない秘密は、いつの間にかこんなにも、の中に増えていて。 なにを秘密にしたかったのか、気付いて欲しくないのか、わからなくなるほどだ。 「刀を・・・持っていたからな。2本のうち片方は鞘のみ・・・となれば、自然。 海に落ちる直前まで、振るっていたと考えるのが妥当だろう?」 ―――――――― ・・・鞘のみ!? 知盛の言葉に、はハッとして顔をあげた。 腰に手をやる・・・そういえば、最初に刀を探したとき以来、その行方を聞いていない。 「・・・ッ!?そういえば、の刀は!?」 あの刀は命を護ってくれる以外にも、にとって、とても大切なものだった。 なにしろヒノエが初めて、のために用意してくれた物なのだから。 「なんだ?、お前刀なんて持ってたのか?」 焦ると対照的に、驚いたような声で将臣が返す。 その声には、が武器を手にすることへの、ほんの少しの不快感が籠められていて 本当なら大丈夫だと言って安心させてあげたかったのだけれども、今はそんな暇がない。 少しでも早く、刀の状況を確認しなければ・・・。 が最初に目を覚ましたとき、部屋にいたのは将臣と知盛だ。 そうして将臣が知らないとなれば、それは必然的に―――――― ・・・ 「・・・の刀は、どこ?」 意を決して、はどこか楽しげな様子の知盛に、声を掛けた。 こうなったら、もう真っ向勝負しかない。 ゆらりと紫色の瞳が揺らめいて、思いのほか透明な彼の両目が、の姿を映し出す。 思わず体がビクリと震えそうになったのを、は懸命に堪えた。 ・・・知盛の眼差しは強い。 こちらを見据える瞳から、その意図を読み取ることは難しく 見ているうちに、反対に引き摺り込まれてゆくような錯覚を起こす。 それなのに、その瞳はただ虚ろではなくて・・・ だからこそ、言葉よりも理性よりも、なにより感覚が先立ち、 の経験と本能が、これはどうしようもなく危険な男だと告げているのだ。 「それほどに、あの刀が良いのか・・・?」 「とても、大切な刀なんだ。」 「クッ・・・・・妬ける、な。」 「おいおい、どうして刀でそんな話になるんだよ?」 呆れた声で告げた将臣に、知盛はちらりと視線を遣ってから 普段は鋭すぎる瞳を彼にしては優しげに細め、再びへと視線を戻した。 するとまたあのぞわっとした、奇妙な感覚が体中を駆け巡る。 ヒノエが女性に甘い顔をして見せるのと同じようでいて、けれど違うその仕草は。 彼がなにかしらの感情をに向けていることを示しているのに、 それがなんなのかまでは、やはり悟らせてくれない。 見えない瞳のその奥底を、どうにかして見透かせはしまいかと奮戦していると、 そんなに、知盛は気付いているのか・・・ まるで見せ付けるように、ゆっくりと口の端を吊り上げて見せた。 それは“にっこり”と言うより、“にんまり”と形容した方がしっくりくるような緩慢さで、 どこか恍惚とした笑みを作ると、知盛はに向けて揶揄するようにこう告げる。 「あれも・・・その“ヒノエ”とやらに、貰ったのだろう?」 「・・・・・・。」 たかが刀に、なにを執着しているのかと言われればそれまでだ。 があの刀に固執しているのは、それだけでないにしても、ヒノエに貰ったものだからという要因が強い。 刀があれば、自分の身を守ることは出来る。 ・・・それがヒノエに貰ったものだろうと、そうでないものだろうと、同じこと。 が拘っているのは、所詮はそんな小さなことなのだ。 決めて掛かったような言い方が気に入らないが、当たっているだけになにも言えず。 けれどその代わりといっては難だが、は先程よりも力を籠めて、知盛を睨み付けた。 「・・・・・・まぁ、いいさ。」 の沈黙を肯定と受け取ったのか、知盛はぶっきらぼうにそう告げると ちょうど銀の後ろにある几帳を自分の刀の柄で、これまたゆっくりと指し示した。 「・・・几帳の裏に、置いてある。」 彼の声が、興味を失ったように覇気をなくすと、 瞳からも同じように、人を引き込んでいたあの強い色が、さぁっと霧散して消えてゆく。 その瞳には、もう先程のような。 初めて“あの時空”で出会ったときにも感じた、意図の読めない感情は欠片も見当たらない。 表面上あまり目立った変化は見受けられないが、なんとも落差の激しい男だ。 人はそれぞれ・・・これは各自の感覚に頼っているところもあるが、オーラというものがある。 簡単に言ってしまえば、その人の醸し出す雰囲気とか、与える印象というやつだ。 けれどこの男には、定まったそれが無い。こうだと思った次の瞬間、それが二転三転する。 関心があるのだと思っていたのに、次にはふと興味を失ったり、 何も求めていないのかと思えば、全てを諦めているわけでもないようだ。 普段はやる気の欠片もない瞳が、時折おもちゃを見つけた子供のようにきらきらと輝くさまを、 はここに来てから数えただけでも、既に何度か見ている。 九郎ほどあからさまでも、素直でもないけれど、 時折、噴出すように表面化する感情の荒々しさは、彼と似ているかもしれない。 ・・・もしかしたら、ただ気紛れなだけかもしれないが。 だがたとえそうだとしても、知盛と九郎では、比べるのもおかしいくらい、立っている場所が違い過ぎる。 九郎のように信念だとか、支えとなるようなものが、知盛の中にはすぐに見つけられないし、 ともすれば、全てを捨ててしまいそうな危うさが、彼という人を彩っている。 けれどまぁ、その安定した不安定さこそが、彼の特色だと言ってしまえばそれまでのことだ。 知盛に指定された几帳を、1番手近に居た銀がめくると、 そこには宣言通り、にとって見覚えのありすぎる短刀が、無造作に置かれていた。 ただ今まで、そこはの位置から死角になっていて、見えなかっただけで・・・ ほっと安堵の息を吐くと、将臣は訳がわからないといった風に頭を掻いて呟いた。 「お前、なんで刀なんか隠してんだよ?・・・小学生の苛めっ子でもあるまいし。」 「・・・・・・・起きてすぐ暴れられては・・・敵わんだろう?」 暗に、隠す必要まではなかったろうと告げている将臣に 知盛は悪びれた様子も見せず、多分わざと、少々見当違いな答えを返した。 ・・・知盛は、見かけによらず人の感情に聡いと思う。 その彼が、わざと答えを濁すその魂胆は、一体どこにあると言うのか・・・ そんな知盛の態度に、銀は重い溜息を1つ吐き、 短刀を慎重に携え立ち上がると、歩いてくる途中、ちゃっかり知盛の膝小僧を蹴飛ばして、 知盛の出方を見るように、身構えているの元へ、刀を持ってきてくれた。 「・・・申し訳ありません、殿・・・大切なものなのでしょうに。」 「ううん、それはいいんだ・・・間違った判断では、ないと思うから。 ・・・ただ手元に戻ってくれば、それでいい。」 そっと差し出したの手に、銀は取り落とさないよう、静かに刀を乗せてくれた。 ヒノエはカタールという名の特殊な形状をした武器を、両手にはめて使用する。 そんなヒノエに戦い方を教わったから、は曲がりなりにも二刀流だ。 しかしそこには知盛が言っていたように、鞘に納まった刀1本と、もう片方は鞘しかない。 聞いたときから覚悟はしていたことだったが、自分の目で確かめてみると改めて落胆した。 「どうしよう・・・・・ヒノエに貰った、大切な刀なのに・・・」 ・・・きっと、ヒノエは怒らない。けれどそれでも、悲しいことに変わりはなかった。 この刀を貰うまでにも、生活するのに必要な着物などの必需品は、既に貰っていたけれど 自分の腕を認めてもらって、その見返りに与えられたものは、初めてだった。 お前のものだとヒノエに手渡されたときの、感慨深さといったら一入で、 今でもよく覚えている・・・実際以上にこの短刀が重く、そして大きく感じられた。 これで施されるばかりでなく、ヒノエの役に立てるのだと・・・ 初めて自分の存在意義を、他人に認めて貰えるのだと、そう思ったのだ。 それからというもの、苦労も、悲しみも、喜びも・・・全てを共にしてきた、の相棒。 ・・・にとってこの刀というのは、ただの身を守る術ではなく、 たくさんの想いが詰まった、実際よりもっと価値のある、かけがえのない品なのである。 「まぁ、仕方ないさ。刀を失くしたことを怒るよりは、 お前が無事だったことを喜んでくれるような奴なんだろ?」 「・・・・・・多分。」 慰めてくれようとした将臣の言葉にも、は投げやりな返事しか返せなかった。 自分でも可愛くないとはわかっているが、それでもどうにもならない。 そんなに気付いているのか、将臣が空気の抜けたような音を出して笑った。 「だったら、別にいいじゃねぇか!・・・刀の代えなら、いくらでも利くしな。」 「そう、なのだけれど・・・・・・」 それでもが不満そうにしていると、隣に腰を降ろした銀が、 綺麗としか形容のしようがない表情で微笑んで、の肩にそっと手を置いた。 「殿のお気持ちは、良くわかりますよ。苦楽を共にし、手に良く馴染んだものを失くされたのですから・・・ それに殿にとって、その刀は特別なものだったのでしょう?」 「・・・・・・うん。」 「・・・あぁ、そのように悲しまれないで。殿の花の顔が曇ると、私まで悲しくなってしまいます。」 そう言って眉を寄せる銀に、は重い頬の筋肉を持ち上げて、どうにか笑って見せようとした。 だが自分でも、その努力はあまり実を結んでいないように思えた。 「・・・重衡、知盛で遊ぶのもほどほどにしとけよ・・・」 「おや、ばれてしまいましたか。」 ふと、刀身のなくなってしまった、空の鞘に目を落とす・・・これからどうやって戦えばいいのだろう? いくら刀は替えが利くとは言っても、これは天竺から取り寄せた希少価値の高いものなのだ。 これに似たものを探すのは、少々骨が折れるだろう。 鍛冶屋に作って貰うにしても、慣れないものだから時間も手間も、そしてお金もかかるに違いない。 「バレバレだっての。」 「このような機会は滅多にないものですから、ついこれまでの憂さ晴らしを。」 「・・・・・・・お前なぁ。」 かといって、この微妙に湾曲した形状と、軽さに慣れてしまったは 普通に売っている短刀でも、刀1本でも上手く戦える自信がない・・・ また、お荷物に逆戻りなのだろうか?そう考えると、溜息が漏れた。 それは案外存外に大きくなってしまったようで、それまで騒がしかった周囲の声がピタリと止む。 はっと顔をあげれば、はしゃぎすぎたかと顔を顰めている将臣と銀がいて―――― ・・・ 別に、彼等の態度が気に入らなかったとか、そういうわけではないのだ。 ただ今のは、自分のことしか考える余裕がないだけで・・・あぁ、もうどうして。 心なしか申し訳なさそうにしている2人に、違うのだと言おうとした、ちょうどそのとき。 「―――――― ・・・殿。」 たどたどしくも、の名前を呼んだのは、 なにか言いたそうにもごもごとしている敦盛だった。 「・・・なに?あっちゃん。」 ほんの少し前まで、暗い気持ちでいっぱいだった筈なのに、自然口元が緩んだ。 彼と話していると、どことなく穏やかな気持ちになれるのだから、 敦盛はとても不思議な人だと思う・・・これも一種の、才能なのかもしれない。 「・・・・・・すまない。」 突然にそうして謝られ、は瞳を丸くして、首を傾げた。 彼に謝れる度、結構な高確率で思うことだが、謝られる覚えが見当たらないのだ。 「どうして、“すまない”なの?」 「その・・・・・・・」 そこで敦盛は一瞬言い淀み、近くにいる将臣と銀・・・ それから知盛と一通り見回し、最後にまたと視線を合わせた。 「・・・色々、と。」 そう問えば、敦盛は困ったように眉を下げて、それきり言葉に詰まってしまった。 こういうところは、の知る敦盛以外の何者でもない。 例え、今目の前にいる敦盛が、が最初に会った敦盛ではないとしても、彼は間違いなく敦盛なのだ。 「あっちゃんが謝ることではないよ?」 人間そう簡単には変わらないのだなと、思わずくすくす笑ってしまう。 すると、それまで硬かった敦盛の表情も、心なしか和らいだ。 はこの、敦盛の微笑みが好きだ。 隠された他意がなくて、見ているこちらまで暖かい気持ちになれるから。 「殿は・・・その、笑っていた方が、良いと思う。 あっ、いえその・・・決して、変な意味ではなく・・・!!」 最後の方は、何故か焦って。 顔の前で手を交差させる敦盛が、可愛くて可愛くて・・・少しだけ、苦しくて。 あの未来だけは選べないと、は新たに心に誓った。 あの未来を訪れさせないためならば、刀の1本くらいなくとも、どうとでもしてやる。 「あっちゃんは、優しいね・・・」 微笑めば、照れているのだか困っているのだかわからない顔をして、 敦盛はまた、耳まで赤くなって黙りこくってしまうのだった。 |
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戯言。 ごめんなさい、なんかもう、自分でもなにが言いたいのかわかなくなってきた・・・! というか、なにがいいたいのかまでじっくり突き詰めて、文章を煮込んでいる時間と余裕がありません、あうあう。 熊野まで4・5・日で届くとか、知盛は二重人格のようだとか 色々適当だったりおかしいところはありますが、目を瞑ってやってくださると嬉しいです(汗) 多分敦盛は、照れていて困っているのだと思います。 恋愛感情どうこう以前に、笑ってるほうがは可愛いなーと思うのですが そのあと知盛の反応が怖くて堪りません(笑) 敦盛は自分の一言でと知盛が険悪?になってしまったのだとも思っているので すまないの気持ちなのですが、はさっぱり気にしていないご様子です。 ・・・というか、彼女はあっちゃん贔屓なので。 |
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2005/12/03