「・・・そう、あの2人に会ったとこまでは良かったんだよ。 あんな荒んだ場所にいた割には、珍しく親切な人間でさ。 最初は驚いたけど、あそこまでは良かったんだ。 フォルテも気が合いそうだったし、ケイナも美人さんだったし・・・(そこかよ)」 昼間でも薄暗く、人気の無い細い路地裏の一端で は己に言い聞かせるように、そんなことをボソボソと呟く。 ・・・・・・成り行き任せに酒場を飛び出したあの日から、既に数日の月日が経っていた。 「・・・なにブツブツ言ってんだよ・・・」 それでもまだ言い足りないとばかりに、が未だぼやいていると 呆れたような声が、ポツリと頭上から降ってきた。 は足のつま先に力を籠め、心中渦巻く思いに任せてグリグリと まるでタバコの火を揉み消すかのように、足元を踏みつける。 するとくにゃっとして柔らかい、何かの気色悪い感触が足の裏から靴底に伝わり “ぐぇっ・・・”という力のない呻き声が、そこから漏れて聞こえた。 「フフフ、ちょっとばっかし昔を懐古していたのさ。(そんなに昔じゃないって) ところでバノッサ、今日これで何人目だっけ・・・?」 「・・・そんなこと、俺様が知るわけねぇだろうが。」 「あははは・・・・・・・・・あぁ、やっぱり?」 バノッサの疲れた声に、もまたうんざりとした声を出して 地面に伏している大勢の中の1人の背中を足蹴にした体勢のまま、ガクリと項垂れたのだった。 〓 第16話 運命の足音 〓 「あーぁ、疲れた疲れた。ちょっと休憩!」 そう宣言すると、はバノッサの返事も待たずに道の端まで移動する。 その間にも、足裏の妙な感触とともに “ぐぇ”だの“うぅ”だの声が聞こえるが、彼女は格別気にした様子もない。 そして、壊れかけたレンガの壁に背を預け そのままずり落ちるように、よっこいしょ、と地面に腰を降ろした。(しかも年寄り臭い。) 「・・・どーこで道間違えちゃったんだろうねぇ・・・」 「・・・・・・なに現実逃避してやがんだ、この馬鹿。」 遠くを見つめ、しみじみと言うに 同じように座り込んだバノッサが、ツッコミをいれた。 「そーりゃ、現実逃避だってしたくなるだろ? 雑魚どもが、よくもまぁこんだけとっかえひっかえうじゃうじゃと どっから湧いて出たんだか、蚊柱みたいに纏わりついてくるんだからさ。」 ・・・そう。何が問題なのかと言うと、酒場でケイナとフォルテと別れたあの後から バノッサとが、行く先々で襲撃を受けた。ということなのだ。 今そこかしこに倒れ込んでいる男達も、そんな中のほんの一例だ。 それは見た目からも行動からも、刺青のあった男たちと同じ類の人種だとわかるのだが 毎度毎度、繋がりの無い人間達が 入れ替わり立ち代り襲ってくるというのは、一体どういう了見なのか。 「・・・まぁ、確かに面倒くせぇな。 暴れられんのは結構だが、こう弱いヤツばっかだと張り合いがねぇ。 あのガキ見つけて、さっさとサイジェントに帰りたいぜ。」 勿論2人が、ただのゴロツキ程度に遅れを取ることなどなかったが それでもこちらは1人なのに対し、向こうはいくらでも換えが利くのだから 次から次へと襲ってこられては、体力の限界というものがある。 元から体力の乏しかったは、すぐさま根を上げることとなった。 今の彼女は、ともすれば怒りと空腹に任せて 街中とはいえ構わずに、ゲルニカを喚び出しても可笑しくは無い。 ・・・それぐらいには、いい加減嫌気が差している。 襲撃は、既に予約を取ってあった宿に戻ってからも続き。 食事中、休憩中・・・所構わず、こちらの事情も全く関係無しにやってきた。 そして早朝も、目覚まし時計代わりに襲撃される始末。 これならまだ、喧しい鳥の鳴き声か 発情期の猫の鳴き声で目を覚ましたほうがマシというものだ。 そのお陰で、とバノッサはここ数日。 1日ごとに宿を転々としなければならない日々が続いていた。 そうでもしなければ、宿に待ち伏せをされて まるで予め打ち合わせでもしておいたかのように 物凄い人数が次から次へと押し寄せてくるのだから、おちおち眠ってもいられない。 これが所謂、波状攻撃というやつだ。 は嫌というほど、その言葉の意味と、どのような効果を持つのかを思い知らされた。 そして例に漏れず、今朝も襲撃に遭って・・・ けれど宿を変えていなかったら、1組だけでは済まなかっただろう。 そんなわけで起きてからもう4時間は経つというのに、達は未だ朝食を取れていなかった。 ・・・原因は、もうわかっている。 襲撃が何組か続いた後。早くも(本当に早いな。)堪忍袋の緒が切れたが 懲りもせず、ノコノコとやって来た何人かを生け捕りにして (同じ人物ではないのだから、懲りてくれるはずもないのだが。) どうして自分達を付狙うのか、付狙ったのか。締め上げて、(怖ッ!?)洗い浚いを吐かせたのだから。 そうして、彼らの口から揃って返された答えは―――――― ・・・ 「・・・“紅き終焉”、だと?なんだ、それは。」 書類の整理をしていたイオスは眉根を寄せて、胡散臭そうに呟いた。 「はっ。1年ほど前から聖王国の西部を中心に出現し始めた、腕利きの賞金稼ぎだそうです。」 「レルムの村のことを探っていた2人組が、その賞金稼ぎだと?」 「・・・はい。彼等の行く所、昼と言えども空は赤く染まり 後には荒野が残るばかり。それはあたかも、世界の終焉のようだ・・・との話です。」 「世界の、終焉・・・」 それを聞いて、イオスの脳裏にあの夜の。 ・・・轟々と火の粉を飛ばして燃え盛る、レルム村の惨状が浮かんだ。 「ですが、それ以上のことは掴めませんでした。」 世界の終焉。そんなものにお目に掛かれるとしたら それはあの晩の、レルム村のような光景なのだろうか? 「・・・そうか。わかった、ルヴァイド様には僕から報告しておこう。 お前は与えられた任務に戻れ。」 けれども、あれが終焉ならば。 ・・・それもまた悪くないなどと、馬鹿なことを思う。 「心得ました。」 ―――――――― ・・・あの、燃え盛る火の海で。 僕は彼女と出会うことが出来たのだから・・・ 諜報部隊がテントから出ようとしたとき、鍋をガンガンと叩く音とともに もう随分と聞きなれた元気な声が、イオスのところまで風に乗って響いてきた。 「イオスー!!お昼ご飯出来たよーーー!!」 遠めに見えるその姿は、イオスがつい今しがた思い描いていた人物。 元気を取り戻した彼女は、またあれから毎日 黒の旅団に所属する者全員分の食事を、飽きもせずに作っている。 彼女が抱えている問題は、今すぐどうにかなるものなどではないが 彼女の中では、一応1つの決着が着いたらしい。 “自分に負けたくはない”と、意志の宿った強い瞳で話してくれた。 自分という存在が。少しでもそんな彼女の支えになってあげられるのなら、嬉しい。 イオスはいつの間にか、自分が随分と穏やかな表情をしていることに気付かず ふっと軽く息を吐いて、彼女に返事を返した。 「・・・あぁ。わかったよ、。すぐに行く。」 イオスの返事に満足気に頷いて。パタパタと手を振り、去って行く。 その後姿を、諜報部隊が羨ましそうに見送っていた。 そういえば、こいつらはほとんど外で食事を摂っているんだったな。 諜報部隊はその仕事柄、この駐屯地に滞在することはほとんどない。 ・・・つまりは、今黒の旅団にいるほとんどの人間が期待している の作った食事を口にする機会も、それに比例して少ない、ということだ。 「・・・ちょうど良い。お前達も食べていったらどうだ? のことだから、それぐらい余分には作ってあるだろう。」 「は、はいっ!!」 イオスが苦笑を漏らしてそう告げると、彼等は目に見えて表情を明るくする。 彼等の景気の良い返事を背に、イオスは薄暗いテントから足を踏み出した。 早く行かなければ、折角の昼食が冷えたと、彼女が怒り出すだろうから・・・。 『噂の賞金稼ぎを倒して、名を上げようと思った。』 それが、彼らが口々に返した、2人を襲った理由。 まさか、フォルテから聞いた賞金稼ぎの話が 自分達のことだとは、はこれっぽっちも思っていなかった。 だから最初は、ただの勘違いだとも思ったのだが 流れている噂を拾い、総合的に検証してみると・・・ ―――――― ・・・ぞんざいに違うと否定出来ない気がしてきた(汗) 決定打とも言えたのが、以前達が壊滅させた盗賊団の、自称残党による目撃証言。 蠍男に絡まれて、フォルテ達に助けてもらったあの夜。 どういう因果か、達が壊滅させた盗賊団の残党が、偶然あの場に居合わせたらしいのだ。 それが元々噂だけはあった、例の賞金稼ぎがゼラムに来ているという話を、確固たるものに変えたのだとか。 「だーーーッ!!いちいちぶっ倒した奴等の顔なんか覚えてるかっつうのッ!!」 目撃者だという当の本人にも会ってみたが、その顔に見覚えはなく。 (寧ろ居場所を突き止めて問い詰めた) けれども、彼の所属していたのだという盗賊団の名前には、なんとなく聞き覚えがあった。 仮にも女の子なのかと尋ねたくなるような乱暴な動作で。 苛々のあまり、はガシガシと髪を掻き毟る。 そんなを一瞥し、彼女の隣でバノッサが冷静に答えた。 「んなもん、普通に考えても数が多過ぎて覚えてられるわけねェだろ。 一体いくつ潰してきたと思ってんだ。」 「そりゃ、そうだけど・・・」 はぁ、と心底疲れた様子で、は盛大な溜息を吐くと 人々から聞き集めた数多くの噂の数々を、脳内で反芻し始めた。 ―――――― ・・・ではここで、彼女達が収集した噂とやらを見てみよう。 噂や証言は実に多岐に渡ったが、それら全てを1つずつ検証していくと、以下のような内容になる。 “彼らの行く所、昼と言えども空は黄昏色に染まり” 「これ、一番聞いたけどさ。・・・アンタのブラックラックじゃないの?」 「・・・テメェのパラ・ダリオかも知んねェだろ。」 「いや、バノッサだね。だってブラックラック十八番じゃん。」 「お前だって得意技だろうがよ。」 “疾風の刃に身体を刻まれ、空からは鉛の雨が降り注ぐ。” 「刃ってのは、バノッサだろ。2刀流だし。」 「・・・2刀流だしってのはどういう理由だ。なら鉛の雨はテメェで決まりだな。」 「・・・・・・なんか。これじゃまるで、が無闇矢鱈に乱射してるみたいじゃないか。」 「実際してるだろうがよ。あれでしてねぇつもりなのか・・・?(汗)」 “野は焼け、大地はひび割れ、頭上では雷が咆哮をあげる。” 「ふむ・・・順に、ゲルニカ、デヴィルクエイク・・・タケシー・・・かな?」 「全部お前の十八番だな。」 「タケシーなら可愛いもんじゃないか。咆哮ってほどのもんじゃないよ。」 “辺りには恐ろしい笑い声が響き渡り” 「「これはお前(テメェ)だろ。」」 (同時にお互いを指差して) 「「・・・・・・ッ!?」」 “宙を天使と悪魔が舞う。” 「・・・・・・フェスとエストか・・・?」 「・・・しかいねぇだろ。そもそも、天使と悪魔が組んでるなんて普通には在り得ねぇだろうが。」 “最後に瞳に焼き付けられえるのは、深紅の色。” 「・・・紅ってのは、基本的にバノッサの担当じゃないの? 瞳とか鎧とかマントとかさ。紅なんてどこにもないしー。」 「・・・(自分の服装を見直して)まぁ、そうかもな。」 “後には荒野が広がるばかり。それはあたかも、世界の終焉の如く・・・” ――――― ・・・とまぁこんな具合だっので 達は否定しようにも“違うっ!”と、完全には言い切れない状況だった。 「・・・なんつーか、よくあんだけ噂が転がってたよな。」 今日も今日とて、変わらず青い空を仰ぎ見て悪態を吐き、はぼんやりとそう呟いた。 「そんなに暴れてたかな?達。」 「・・・さぁな。俺達にとっちゃ大したこと無くても あいつらにとっちゃ見たこともないほど恐ろしいもんだったんだろ?」 「まぁ、そうかもね。世界の危機なんてのに立ちあっちゃってるしなー。 今更ちょっとやそっとじゃあ驚かないことは確かだね。」 ふぅ、と諦めの溜息を吐くと、は反動をつけて一気に立ち上がった。 「休憩終了っと。」 「・・・もう動けんのかよ?」 「どうにか、ね。それよりも今は腹が減ったーーー! どっか安心して飯喰えるとこないのかーーーっ!!・・・・・・って、あ。」 「どうした?」 「・・・そういやさ。ゼラムって確か、ギブソンとミモザが住んでる筈なんだけど。」 「フード深く被った陰険そうな男と、テメェと張れるぐらい騒々しい女か。」 「・・・今は疲れてるから敢えてつっこまないけどさ。・・・まぁ、ともかくはそれよ。」 「確か、蒼の派閥から派遣されて来た召喚師だったな。」 「・・・うん。あの2人のところに転がり込めば きっとこういう輩には追われないし、安全なんだろうって一瞬思ったけどさ ミモザに良いように使われそうだから、結局は一緒だな、とか思ったり。どっちがマシか、ってとこ?」 「・・・だろうな。」 「あぁもう嫌だ・・・ッ!どうせ戦るなら制限なしに思いっきり暴れられるほうが楽だーーーッ!!」 うがー!と両手を挙げてが叫ぶ。 すると彼女の叫び声に紛れて、何かが振動する音が響いてきた。 ・・・恐らくはの上着から聞こえてくるのだろうその奇妙な音に、バノッサは聞き覚えがある。 「・・・バイブの音・・・あ、会長からだ。・・・はい、もしもし?」 『あ、かい?』 「会長!おはようございます!珍しいですね、そっちからかけてくるなんて。」 途端、さっきまでの機嫌の悪さはどこへいったのか。 嬉々としたの声に、バノッサが不満そうに眉を吊り上げる。 『あぁ。おはよう、。元気そうで、安心したよ。 どう、ゼラムは楽しいかい?バノッサとはきちんとを護ってくれてるかな?』 「はい!食べ物もお酒もおいしいですし、なんといっても大きい街ですからね。 色んな物が見れて、なかなか楽しいですよ。バノッサも、そこそこ頑張ってます。」 「・・・・・・・・・・・・おい。」 バノッサが何か言いたそうに、そう低く呻いたが も、多分受話器の向こうで聞いているだろうトウヤも。その非難の声を軽く流した。 『それは良かった。それで早速なんだけれど、探しはその後どうなってる?』 (未成年なのにお酒についてはスルーなんですか・・・) 「それが・・・一向に手掛かりナシ。完全に手詰まりです。 どうもあの村を襲ったヤツラ、かなりのプロみたいですね。 存在していた痕跡は確かにあるんですけど、そこから先がさっぱりで。 ・・・例外もありましたけど、証人はほとんど残さず抹消しちゃってるみたいですから かなり大掛かりな作業ですし、それが出来るだけの大きな組織なんじゃないかとは思いますけど。」 『・・・そう、ご苦労様。実はそんなに、朗報だよ。』 「え?なんですか朗報って?」 が少しだけ驚いた声を出すと、バノッサもの傍に寄ってきて が耳をつけている方とは反対側から、音を拾おうと携帯電話に耳を寄せた。 『うん、実はね。ミモザ達から手紙の返事が届いたんだ。』 「――――――― ・・・ミモザ達から、ですか?」 トウヤの口から出てきた名前に、は隠すことなく顔を顰める。 さっきまで話題に上がっていたせいもあるが、なんとはなしに嫌な予感も拭えない。 声の調子からそれがわかったようで、向こう側からクスクスとトウヤの笑う気配がした。 「・・・で、彼女達はなんて?」 『・・・らしき人物を、見つけたらしい。』 「なんだってッ!?そ、それは本当ですか!?会長ッ!!」 『本当だよ。ただ、彼女達にも色々事情があって、今傍に本人はいないそうなんだ。』 「・・・それじゃあ本当にかどうか、100%断定は出来ないってことですね?」 『・・・そうなるね。けれど僕は、ミモザ達がわざわざそう連絡を寄越したぐらいだから かなりの確証があるんだと思う。それがである確率は高いだろう。』 「・・・ですね。でも、あいつらの言う事情ってなんですか?」 『なんだかとても複雑難解そうだから、聞くよりも会って直接確かめた方が早いと思うよ。 達は、今ゼラムにいるんだろう?』 「はい、います。」 『じゃあ、出来るだけ早く彼女達に合流してくれるかな? なんだか向こうも、達の力を必要としてるみたいだからね。』 「―――――― ・・・厄介ごとですか?」 『あはははは。十中八九そうだろうね。』 「・・・わかりました。会長がそう言うんですし ミモザの頼みなら放っておくのも後が怖いですから。出来るだけ早く向かいます。」 『うん、そうしてくれると助かるよ。』 「了解です。ミモザ達と合流できたらまた連絡しますから。それじゃあまた後で・・・」 ピッと音を立てて電話を切り、は携帯電話を耳から外した。 「行くのか?」 バノッサの問いに、はふうっと肩を竦めて見せる。 「・・・しょうがないじゃん?のこと、何かわかるかもしれないんだし。 あー、でもミモザの持ち込む厄介ごとって本気で厄介そうだよな。 それでもまだ、あいつらの抱えてる厄介ごとだったらいいけど もしそれに蒼の派閥が関わってたりしたら、最ッ悪!!」 うげげ、と心の底から嫌そうな声を出す。 バノッサは、それに呆れたように溜息を吐いた。 「・・・お前、まだ直ってねェのかよ?その、“蒼の派閥嫌い”。」 ・・・そう、何を隠そう。は大の“蒼の派閥嫌い”なのだ。 それはもう、ゴキ○リや魚の活け造り。そして定期テストやレポートと同じくらいに嫌悪感を抱いている。 (いや、なんか色々違う気が・・・) 「あたり前だろ!?直るわけないッッ!!」 つい勢い良く怒鳴ってしまってから、は自分が本気で叫んでいることに気付くと 失敗した、とばかりに口を噤み、手で顔を覆い隠した。 感情を持て余すかのように、辺りに視線を彷徨わせ、苛立った様子で頭を掻き。 ・・・それから深い溜息と共に、ガクリと首を垂れた。 彼女が本気でそう怒鳴ったことに、勿論バノッサは気付いていたが 敢えて何事もなかったように、いつも通りの調子で話を続ける。 珍しく感情の制御が利かない自分に、彼女自身も困っているようだったから。 「珍しいじゃねェか、世の中金の派閥を嫌う連中の方が多いぜ?」 「・・・理由、知ってるだろ。」 「・・・そうだけどな。」 地声よりいくらか低い声でそう唸り、一瞬こちらに恨めしそうな視線を向けた彼女。 それに、軽く嘆息して――――― ・・・これは結構重症だ。そう判断する。 けれどもバノッサは、相変わらずの口調でそう返した。 ・・・が蒼の派閥嫌いになった理由。 それをバノッサは、以前フラットのメンバーから聞かされていた。 それはやはり、1年前の事件の際に起こったことで 蒼の派閥が、今は誓約者と呼ばれる彼等を 当時正体不明の力を使う危険人物と見なし、派閥本部へ連行しようとしたことにある。 言葉の上ではやんわりと願い出たが、けれどその実半ば強制的に。 それは拒否権を与えずに行われた。 だがあのとき、キール達に召喚されたのではない。 ・・・つまり、得体の知れないものを取り込んでいないだろうとされるだけは 名もなき世界の出身でありながら、蒼の派閥への連行を免れた。 それは派閥なりの好意であったかもしれないし ギブソンのせめてもの罪滅ぼしであるかもしれなかった。 けれどもにとっては、一緒に連れて行かれたほうが、まだいくらかマシだったのだ。 蒼の派閥の召喚師達は、に1番してならないことをしまったのだから。 ―――――― ・・・をトウヤから引き離すという、最悪の行為を。 それが彼女の逆鱗に触れてしまった。 それほどにとって、トウヤという存在は不可欠なものなのだろう。 その後、はミモザと共に連行途中の派閥に奇襲を仕掛け 無事かけがえのない仲間を取り返すことに成功した。 ―――――――――― ・・・が。 トウヤが止めなければ、はギブソンさえをも巻き込んで 派閥の人間全員を殺しかねない剣幕だったのだという。 その戦いの舞台となった場所では今でも が使ったのだという高位召喚術の爪痕が、生々しく残っている。 「・・・バノッサこそ、平気なのか? ミモザ達はまだしも、蒼の派閥は驕り高ぶった召喚師の集まりだぞ。」 まだ少し。感情を抑制した感のあるの声に、バノッサが視線をそちらに向けると 彼女は剥がれかけたレンガの道を、不貞腐れたように睨みつけていた。 それでもさっきから比べれば、声を荒げないだけ、随分落ち着きを取り戻したようではあったが。 「なに言ってやがる。俺は召喚術が使えるようになった。下手すりゃあ正規の召喚師よりもな。 だからもう、召喚師どもに劣等感なんか抱いちゃいねェんだよ。」 「・・・・・・劣等感持ってたって認められるようになっただけでも、バノッサにしては豪い進歩だよな・・・」 未だ不機嫌そうに口を尖らせながら、それでも悪態を吐くことは忘れない。 「うるせぇ。・・・まぁ、俺様はお前と違って大人だからな。 それぐらい、もうどうってことねぇんだよ。」 「・・・・・うっわ、子供に子供だって言われちゃったよ。」 眩暈がする、といって額を押さえるに、バノッサが“オイ・・・”と非難がましく呟いて。 でもは、バノッサが自分の気を紛らわそうとしてくれているのだろうと 声にはせずにちょっとだけ感謝して、クスクスと苦笑を漏らした。 ・・・もう平気だよ、と。言葉にして告げる代わりに。 やっぱりバノッサの方が、ほんの数年だけれども。 永い刻の流れから考えれば、それは本当に僅かだけれど、長生きしているだけあるらしい。 苦笑する、そのの表情に。バノッサは内心、少しだけ安堵して 今度は突然弾かれたように顔を上げ、ん?と訝しそうに唸り まるで犬のようにくんくんと鼻を動かし始めたを不思議そうに見つめた。 「・・・なにやってんだよ。あの軟体動物(ガウムのことらしい)の真似か?」 「・・・・・・いや、なんかさ。良い匂い、しないか?蕎麦とかうどんとか、そういう麺類系の。 よく駅前でしてくるんだよなー。立ち食い蕎麦のさ。」 「ソバだのウドンだのは知らねェが、確かに美味そうな匂いはするな。」 「そっか、リィンバウムには蕎麦もうどんも浸透してないんだっけ。 ・・・この匂い、向こうからしてくるな。よし、行ってみようバノッサ!」 「・・・わかったから、マントは引っ張るな!破れたらカノンがいねぇんだから繕えないだろ。」 「失敬な。それぐらい繕えるさ!! ・・・家庭科10段階評価で9だったし、大丈夫だって!!・・・・・・・・・・・・多分。」 こうして、2人のおいしそうな匂い探索がスタートした。 おいしそうな匂いを追って達が辿り着いたのは・・・一般住宅街。 「住宅街・・・?もしかして、人様んちのお昼ご飯の匂いだったり?」 「―――――― ・・・いや、違うみてェだぜ・・・?」 “見てみろよ”とバノッサが視線で示す先には、なにやら怪しい赤暖簾。 そしてそこには、シルターン文字(けれどもは、日本語だといって聞かない。)で “あかなべ” ・・・とデカデカ書いてあった。 「・・・蕎麦処・・あかなべ・・・(汗)」 「―――――― ・・・あれ、あの薬屋んとこに書いてあるのと同じ文字だろ。(汗)」 どうやら匂いの原因は、暖簾のかかっているその屋台からのようだ。 とバノッサはお互いの顔を見合わせ、ゴクリと唾を呑むと。 ・・・意を決して、ヒラヒラと風に靡く赤暖簾を潜った。 「すみませんお客さん、まだ準備中なんですよ。」 人の入ってきた気配に、けれども振り返って人がいることを確かめる前に。 屋台の店主は既に人がいることを確信した口調で 人の良さそうな笑みを浮かべ、やんわりと断りをいれる。 それからやっと、ゆっくり後ろを振り返った。 そして本当に視えているのだか、疑いたくなる(酷)あの細い瞳で 視界に達の姿を留めると、驚いた風に眉を上げた。 たったそれだけの動作も、彼の真実の顔を知っているにとっては、酷く嘘臭く映る。 「・・・おや、珍しいお客さんですね。いらっしゃい。」 そこにあった、期待を決して裏切らない、予想通りの人物の姿に はどっと疲れが押し寄せてきた気がして、肩を落とし盛大な溜息を吐く。 「・・・なんだかすっごく白々しいんだけど・・・どう思うよ、バノッサ?」 「・・・同感だ。」 「お2人とも、お変わりないようでなによりです。さぁどうぞ、好きなところにおかけください。」 「・・・準備中じゃなかったのかよ?」 バノッサのそんな呟きに、けれども彼・・・シオンはただ笑うだけ。 あのいつもニコニコとしている表情の裏に とても冷めた瞳が隠されていることを、2人は知っている。 ・・・だからこそ。彼は信用に足る人物であると思っているが なによりも、その絶えない笑みが曲者の、なかなか喰えない男だとも思う。 「・・・んで?何があるの?」 問い掛けながら、面倒臭そうにが席に着いたので バノッサもそれに倣い、彼女の隣に腰を降ろした。 それを見て、微かにシオンが笑ったような気がするが気にはしない。 「まだ準備中ですから、大したものはないんですよ。」 すみません、と言いながら出されたのは、極々シンプルな温かいかけ蕎麦。 「あぁ、そ。んじゃ遠慮なく、いただきまーす。」 「・・・食べる前にどうしてここにいるのか、とか。そういう疑問は湧かねェのかよ、お前は。」 そうぼやきながら、バノッサがぱきっと割り箸を割った。 は蕎麦を啜りながら、そんなバノッサの行動を眺める。 「だって、きっとシオンのことだから 達が追われてるの知ってて、こんな所に屋台出してたんだろ?どうせ。」 「さんは、どうしてそう思われるのですか?」 「シオンって怪しすぎるから。全部知ってて、素知らぬ顔して出てきそうだ。」 そうキッパリと即答すると、シオンは忙しなく手を動かしながら、クスクスと苦笑した。 「・・・さんには敵いませんね。」 「認めんのかよ?」 「はい、認めますよ。」 ヌケヌケと答えるシオンに、バノッサがチッと舌打ちする。 「けどさー、なんだってゼラムに?いつごろから来てんの?」 「そうですね・・・1週間ほど、前からでしょうか? 途中数日、留守にしましたが。」 「ほら。じゃあやっぱりあのときが見たの、シオンだったんじゃないか。」 余程お腹が空いていたのか、話しながらも物凄い勢いで蕎麦を平らげる。 そんな彼女の前に、シオンはいなり寿司の乗ったお皿をコトン、と置いた。 「うっひゃおぅ!!いなり寿司だーーー!!」 「お好きでしたよね?どうぞ召し上がってください。」 「いっただっきまーす!!」 がいなり寿司にがっつき始めたのを見届けて、シオンはバノッサに向き直る。 「街で私をご覧になられたのですか?」 「・・・あぁ。俺は見てねェが、コイツがお前だって言い張ったんだよ・・・。」 「そうですか・・・。」 「・・・で、ゼラムでなにしてんの?」 いなり寿司を飲み下したが顔をあげ、もう1度尋ねた。 「トウヤさんから連絡が来ませんでしたか?」 「あぁ、さっき来たけど?ミモザとギブソンとこ行けって。 でも今思ったんだけどさー、あの2人がどこに住んでるか知らないんだよね。」 「はぁッ!?知らないでどうやって行く気だったんだよ、この馬鹿!」 「・・・・・・うるさいなぁ。お前だって知らないだろ?しょうがないじゃないか。 リィンバウムって、何丁目とか何番地だとかって表記ないんだから。」 が何かを要求するように、ヒョイっと手を差し出すと シオンはの手に、麦茶の入った湯飲みを渡す。 それをグィっと飲み干して、は続けた。 ・・・彼女にとっては酒も麦茶も、全部同じ水分でしかないのかもしれない。 「それに、どっちかの魔力探ってけばそのうち着くかなーって。 けどゼラムって蒼の派閥の本部あるじゃん?だからさっきから召喚師っぽい いかにも制御に慣れてます、って感じの魔力ばっかぶちあたるんだよな。 ・・・ま、あの2人程の魔力持ってる奴なら、そんなのに埋もれず気付けるだろうけど。」 そう言って、シオンに“おかわり”と湯飲みを差し出す。 注がれていく茶色い液体を眺めながら、が不意に首を傾げた。 「・・・っていうか。なんで会長から連絡あったこと、シオンが知ってるのさ。」 そう尋ねると、シオンは含みのある笑みを浮かべた。 「ミモザさんとギブソンさんのお宅なら、私がご案内出来ますよ。」 「・・・・・・それってつまり、もしかして・・・?」 「フフフ、お解かりになりましたか? サイジェントとゼラムの間で書簡の渡し役をしたのは、私です。」 「・・・なるほどね。道理で会長が手紙を出したって言ってた時期のわりに ミモザ達から返事が来るのが早いと思った。 職権乱用したのかと思ってたけど、シオンが飛脚屋だったわけ。そりゃ早いわ。」 はぁ・・・と納得したんだか疲れたんだかわからない声を出して は最後のいなり寿司を、口の中に放り込む。 「まぁいっか、問題は解決したんだし。・・・あぁ美味かった、ごちそうさまー。」 「ありがとうございます。」 の賛辞に、シオンは変わったのか変わらないのかわからない表情で笑みを浮かべた。 はそのままイスから立ち上がり、ぐぐっと満足そうに背筋を伸ばす。 そしてぐるりと辺りを見回し、緩やかな斜面の先にある高台を見つけた。 あそこからなら、街全体を魔力的にも視覚的にも。視るのに適しているだろう。 そう考えて、はちらりと後ろにいるバノッサを振り返る。 彼はだらけているのか食べるのが遅いだけなのか、どちらかはわからないが まだシオンに出された蕎麦を啜っているようだった。 だからはバノッサを残していくことにして、高台のほうを指差し、大声で告げた。 「バノッサ!、ちょっとあっちの高い場所まで行って 街の様子眺めてくるわ。見てくるだけだから、すぐ戻ってくるよ。」 「あぁ、行って来いよ。」 食べ物を食べて体力が回復したのか パタパタと、すっかりいつも通りに元気よく駆けていく彼女の後姿を見送って バノッサはシオンに振り返る。 「・・・良かったんですか?ついていかなくても。」 “いつもならついていくのに”、と遠回しに告げているシオンの追求の視線から バノッサは顔を逸らすことで逃れた。 「・・・いいんだよ。それよりも、テメェに頼みがある。」 「珍しいですね、貴方が私に頼み事なんて。どんなご用件でしょうか?」 「・・・シェスカって女を知ってるか?」 その名前を出した途端。シオンの瞳が、微かに見開かれた。 「えぇ、名前だけは。確か、好みの殿方を従えるのがお好きだという 変わったご趣味をお持ちのご婦人でしたね?」 「・・・・・・あぁ、それだ。ソイツとその追っ手をどうにかして貰いてぇんだよ。」 うんざり、といった様子で吐き捨てるバノッサに シオンは黙って、今まで鍋で温めていた熱燗を差し出す。 「・・・その様子ですと、彼女に気に入られてしまいましたか?」 クスクスと笑うシオンを、バノッサはギロリと睨んだ。 普通の人間だったら怯えてしまうようなその眼光にも、彼が動じた様子はない。 相変わらずの笑みを浮かべて、不機嫌になったバノッサを見つめている。 その不機嫌さが、返事はなくとも肯定の意を示していた。 「・・・てめぇらはスッポンかってくらいにしつこい。」 しばらくして、彼はたったそれだけを告げる。 「・・・それは災難でしたね。 それで、さんに気付かれる前にどうにかしたい・・・と言ったところですか?」 「わかってんなら、イチイチ言うんじゃねェよ。」 言ってバノッサは、酒を一気に飲み干した。 ワインやウィスキーとは違う、独特の味がするそれ。 バノッサはこれが、なかなか嫌いではなかった。 「あの馬鹿に勘付かれると、面倒なことになるからな。さっさと・・・」 「なにがに勘付かれるとマズイわけ?」 突如背後から掛かった声に、バノッサはビクリと大きく体を震わせた。 「て、テメェッ!!いつからそこに居やがったッ!?」 慌てて振り返ると、そこにはきょとんとしたの顔。 「いつって・・・ついさっき。すぐ戻ってくるって言っただろ? ・・・っていうかそれぐらい気付け。」 だからって速すぎだろ。 バノッサは内心そう毒づいた。 「――――――― ・・・どこから聞いてやがった・・・?」 「“あの馬鹿に勘付かれると”ってトコからだけど・・・・・・なに? そんなに聞かれちゃマズイこと話してたわけ?」 はからかうネタを見つけたとばかりに、ニヤニヤと口を歪めると 勢いよく席に着き、カウンターから身を乗り出した。 「なぁなぁ!なんの話してたんだよ?シオン!!」 「申し訳ありませんがいくら貴女の頼みでも、それはお教え出来ませんよ、さん。 忍びたる者、秘密の厳守は基本ですからね。」 「うーん、アカネの師匠とは思えない発言だね・・・ でも秘密厳守が忍びの基本ってことは、なんか仕事でも請け負ったの?」 「・・・・・・これはこれは。今のは私の失言でした。」 「ふーん?」 そうつまらなそうに呟いて、は隣に座っているバノッサにチラリと視線を向けた。 「・・・なぁに頼んだんだか知らないけどさ。ま、しょうがないか。 シオンが話してくれるとは思えないし、勘弁してあげるよ。」 「そうしてくださるとこちらとしても助かります。・・・あ、ですがさん。 あくまで私の口から言えないだけでして 依頼人本人から直接聞き出すのであれば、私は一切関与致しませんよ?」 げっ!?とバノッサが顔を顰めたときには 既にはニコニコと妖しすぎる笑みを浮かべて、バノッサを見上げていた。 その微笑みが、どことなくトウヤを彷彿とさせる。 「ほうほう・・・?―――――― ・・・というわけで。バノッサ、吐け。」 「誰が言うかッ!!」 「はははは。」 「テメェもコイツ煽っといて笑ってんじゃねェよッ!!」 バノッサが必死になってそう怒鳴り、そんなバノッサの様子を見て、またシオンとが笑う。 けれども、頑なに話すことを拒否するバノッサに はしょうがないな、と聞き出すことを諦めたようだった。 ―――――― ・・・は案外飽きっぽい。 「さて、と。・・・じゃあそろそろ行きますか。」 「もう、休憩はよろしいのですか?」 「本音を言うと、もう少しゆっくりしていきたいところなんだけど・・・ あんまりそうもしてられない身なんでね。迷子の子猫が待ってるから。」 「そうですか。ギブソンさんとミモザさんも 貴方の到着を心待ちにしていると思いますし・・・では、そろそろ参りましょうか?」 「おう、頼むよ。シオン。」 「お任せください、さん。」 そう、ちょっと買い物にでも行くように、気楽に呟いて シオンが屋台を片付けるのを待ってから、3人は住宅街に背を向ける。 『―――― ・・・もうすぐだ』 「・・・ん?」 シオンの後ろについて、数歩足を進めたところで ふと背後から声が聴こえてきたような気がして、は後ろを振り返る。 けれども、仮エルゴという仕事上。どんなに微弱な魔力も感知出来るは 誰かが背後にいたならば。その能力でもって、振り向かずともその存在に気付ける筈だ。 ・・・そしての“感覚”が告げるとおり、そこには誰の姿もなかった。 ただ冷たい風が、目の前の空間を駆け抜けてゆく。 「・・・・・・??」 だが、それをただの空耳で済ますには、何かが腑に落ちなかった。 何が?と言われれば、わからない。けれども、どうも空耳では済まされないような気がする。 がその場に立ち止まって、2,3度不思議そうに首を傾げていると バノッサが自分を急かす声が聞こえてきた。 「オイ、なにやってんだ。・・・さっさと行くぞ、馬鹿。」 「あ、あぁ・・・」 おかしいな。確かに、声が聴こえた気がしたんだけど・・・ そうは思ったけれど、やっぱりそこには何もない。何も聴こえない。 いくら耳を澄ましても、風の音以外に何も聞こえはしなかった。 仕方が無いので、“まぁいいか”と気にしないことにして は先を行く2人の元へと、早歩きで近づく。 決して、走るようなことはしない。そこが彼女らしいと言えば、らしいのだが。 「・・・さっさと来ねぇと置いてくぞ。」 「はいはい、だから今行くって。」 あとちょっとで追いつくというところで、面倒くさそうにバノッサがそう言った。 口ではそう言っていても、彼は絶対にを置いて先に行ったりはしないだろう。 そう思って、はバノッサにばれないように、こっそりと苦笑した。 ちょっとだけ、小走りになりながら。 運命の歯車が、一際大きな音をたてて軋む。 役者が揃い、全てが始まる再会は。もう、すぐそこまできていた・・・ |
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戯言。 はいこんにちは。お久しぶりの16話、やっとこさお届けです。 それにしても、なにやらなくても支がないようなお話が出来上がりましたね(汗) こんな駄文ですが、読んでくださった方、ありがとうございます! えっと。実は今回、“噂”の内容のあたりが書きたかったメインだったり致します。 なくても全然支障はないし、あほらし・・・なんて思うんですけど ちょっとばっかり書きたいなぁなんて思ってしまったものですから、書いてしまいました。 読みやすさとかわかりやすさも大切だと思うんですけど やっぱり書きたいものは書いとこう、がモットーなので。 ちょっと・・・なんていうか、色々とありがちですよねぇ・・・(ブツブツ) 話をスムーズにする為に、今後も今回のように脇役のお方にも名前がついたりすると思います。 ですが、完璧に脇役なので!名前があるからと言って なにか重要なオリキャラ、ってわけじゃありませんですよ。はい。 名前がある人は、今回簡単な人物紹介として、長編の最初のところに足しておきました。 あるとわかりやすいかな、と思いまして。多分、これからも増え続けるでしょう(笑) ともあれ、シオンに出会いました! これからギブソン・ミモザ邸にいるマグトリ一行と合流です。 予定通りに、ここからトントン拍子に進んでくれれば良いのですが・・・。 上手くいけば、あと2回ほどで主人公2人が邂逅するハズなんですけどね。 |
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