「うわーーん!!」 空気が乾燥して、足を動かすたびに砂が宙に舞う。 そんな中、一際大きな声を上げて、レシィが転倒した。 それに気付いたは、急いでUターンしてレシィを起き上がらせ、服のほこりを叩く。 「レ、レシィ!!大丈夫なのですかッ!?」 「チッ!なにチンタラしてやがんだ!!さっさとしねぇとアイツラ行っちまうだろ!」 「ハサハも・・・疲れた、よ・・・」 その声にふと見ると、ハサハも耳を垂らして荒い呼吸を繰り返していた。 ・・・確かに。レオルドはともかくこんな小さな子達が 自分よりもずっと歩幅の広いものを追いかけて、もう10分は走り通しなのだ。 ハサハも今までずっと我慢していたのだろうし、レシィも決して口にはしなかったが かなり疲れていたのではないだろうか・・・? 二人とも走りづらそうな格好してるですしね。 意外なのはバルレルが、この小さな体のどこに。 それだけの体力があるのかってくらい持久力があること。 機械兵士なのだからレオルドは勿論平気なのだろうが さえも少し疲れが見え始めたこの状況下において、バルレルは先頭を切って走り続けていた。 「レオルド!レシィとハサハを抱き上げて走れますか!?」 の問いに、レオルドはピピッと音をたてる。 「・・・ハイ。コノ二人ナラバ抱エテモ、移動速度ニ支障ヲキタサズニ移動スルコトガ可能デス。」 「じゃあお願いなのです!」 「・・・了解。」 そう言って、レオルドが右腕と左腕に、それぞれハサハとレシィを抱え上げた。 ぐったりとした二人が、レオルドの腕にしがみつく。 「・・・すみません。レオルドくん、さん・・・」 「・・・ごめんね・・・?」 申し訳無さそうにする二人には笑いかけてから、少し前方を走るバルレルの後を追いかけた。 すぐ後ろから、ガションガションと機械特有の音をたてて、レオルドが付いてくるのが分かる。 がやっとバルレルの隣にまで追いつくと、バルレルがを見てニヤリと笑った。 「・・・ケッ!意外とやるじゃねぇか、オマエ!」 「・・・それはどうもなのですよ!!」 吐き出すようにそう言って、 は訓練をしてくれたサイジェントの面々に少しだけ感謝した。 ・・・そもそもどうしてこんなにダッシュしつづけているかというとですねぇ。 話は長くなるのですが、それはちょっと前に遡るのです。 〓 第4話 荒野を走れ 〓 「ここがお城だよ。」 両手を広げてに振り返るトリス。 その後ろにそびえるのは、ここゼラムを治めている国王の住居だ。 サイジェントにあった領主の城も結構大きなものだと思っていたが さすが王城だけあって、その比ではない。 元から大きくはないトリスが、余計に小さく見える。 「うひゃあ・・・大きいのですねー。サイジェントにあるのはもっとちみっこいのですよ。」 「サイジェントにもお城があるの?。」 マグナが横からひょっこり顔を覗かせた。それには大きく頷く。 「でも入ったことはないのです。やっぱり王様のお城も入れないのですよね?」 「当たり前だろう。」 そう答えたのはネスティ。はつまらなそうに、頬を膨らませた。 それから周囲を見回して、感嘆の息を漏らす。 「・・・はぁ〜でも王都ともなると、たくさん人がいるのですねぇ・・・ 領主さんのお城の前は、閑散としているですのに・・・」 「・・・いや・・・普段はこれほど人気のある場所じゃないんだが・・・」 「ほへ?そうなのですか?」 「・・・なにかあったのかな?ネス、あたしちょっと見てくる!」 「あ、俺も俺も!!」 ネスティが・・・多分止めようとしたのだろう、口を開きかけたが 既にマグナとトリスは、助走をつけて人だかりに突っ込んで行った後だった。 まるで通勤ラッシュの電車なのですよ・・・(汗) 「・・・全く、世話のかかる・・・。」 ネスティが溜息混じりにそう呟いた。はそんなネスティを見上げる。 「・・・ネスティは、何があるのか気にならないのですか?」 は気になって気になって、 ネスティがいなかったら二人について行ってたのです。 ・・・そう声にだしたらお説教が始まるのは目に見えているので、決して言ってはならないが。 「大体の予想は付くからな。・・・おそらく、さっき役人に突き出した野盗が アジトの場所を吐いたんだろう。」 「さっきって・・・すぐそこの休憩所でサンドバックにしてやった人達ですか?」 サンドバックにしたんかい・・・!! 自己紹介の後、一度はすぐに旅立った達だったがちょっと・・・ 本当にちょっとだけ(ほんの数十分のところだった)進んだところにある休憩所で、野盗に襲われたのだ。 その時、随分と焦っていたトリス達に代わって。 サイジェントで何度も、野生化したはぐれ召喚獣や盗賊を追い払っていたが 腕の見せ所とばかりに、護衛獣のみんなと一緒に野盗をボコボコにしたのである。 (レシィすら半泣き状態で殴っていた。) ・・・まぁ。殺すんじゃなくて、気絶させたり、戦意を喪失させればよかった だけだったから、あれだけ動けたのですけど・・・ 殺さなければ戦闘が終わらないというのなら、話は別だ。 “殺せない”は、役に立てない。 後から聞いたところ、トリスやマグナは今まで派閥から出たことすらも数えるほどしかなく。 盗賊と戦うなんて、初めてだったらしい。 その時ばかりはネスティにまで、とても感謝されてしまった。 そんな活躍をみせただが、その帰りに何度か遭遇したはぐれ召喚獣との戦闘では やはりトドメを刺す事が出来ず、追い払ったり・・・弱らせることしか出来なかった。 その時、よりもずっと経験の少ないはずのトリスやマグナが 慣れない手付きでトドメを刺していることに、はとても驚いた。 ・・・けれど考えて見れば、彼等は普通に街中に武器屋があって、 刃物や殺傷能力のあるものが売っていて、召喚術まである世界の住人なのだ。 の居た世界よりは、一般市民にとっても死は・・・ ・・・別の生命を絶つことは、身近にある社会で生きてきたのだから。 社会が違うと、一般人でも・・・こんなに、違うのですね。 そんなところで、生活習慣や食べ物。色々自分達の世界と共通点の多いこの世界と 自分の世界との、決定的な違いを思い知らされる。 けれどがそれを話すと、マグナとトリスは 無理はしなくていいと笑って言ってくれたのだ。それが、ありがたかった・・・。 ・・・が野盗をぼこぼこにした様子を思い出したのか。 ちょっとだけ引きつりながら、ネスティが。・・・問いかけた本人も、 考えにふけってしまって忘れかけていた問いに頷き返した。 「・・・ああ、そうだ。」 「はへぇ・・・じゃあ賞金がかかるですかね?」 「まず間違いなくそうなるだろうな。・・・誰か、冒険者に知り合いでもいるのか?」 聞き返され、はふと・・・とバノッサのことを思い出す。 に言わせると『本職は違う!!』・・・らしいのだが、普段やっていることは正しく賞金稼ぎだ。 「うーん・・・冒険者というより、賞金稼ぎ屋さんなのです。」 「そうか。・・・だが、そういう人間には気が荒い奴も多い。 特に王都ともなると、いろんな人間が各地からやってくるからな。十分気をつけたほうがいい。」 「あー・・・そうかもしれないのですね。」 あの二人は、ネスティの言う気を付けるべき人間に絶対入っているのです。 失礼な 妙なところでがしみじみと同意していると、人だかりの方をじっと見ていたバルレルが声をあげた。 「・・・オイ。あの二人、帰ってきたみたいだぜ。」 がバルレルにつられるようにしてそちらを見ると、二人がこちらに向かって走ってくるのが見えた。 「あ、本当だ。ご主人様達です。」 レシィもそう言い、も・・・ この時は、二人が自分達のところに向かってきているのだと、疑いもしなかったのだが・・・ 「お帰りなのです!どうだったので・・・」 どうだったのですか? しかし。そう聞こうとした、の言葉は続かなかった。 ビュン!! 「――――――――――――――― ・・・もひょ??」 横を一陣の風が通り過ぎる。 勿論それはトリスとマグナが巻き起こしたもので・・・。 二人は達の横を走り抜けていったのだ。 最初は気付かないで通り過ぎてしまったのかとも思ったが、二人はどこまでもどこまでも走っていく。 何がなんだかわからない。全員がポカンと口をあけ・・・ 二人の奇怪な行動に、やっぱり一番に対応出来たのは 長年兄弟子をやっているだけあるネスティだった。 「トリス!!マグナ!!何所に行くんだッ!!」 普段の彼からは想像できない大声でそう叫ぶ。 あまりの声の大きさに道行く人の何人かが、一体何事かとこちらを見ていた。 それが聞こえたのか、速度を落とさないままトリスとマグナが後ろを振り返る。 「ごめんね!みんな!!」 「俺達、盗賊退治しに行ってくるから!!!ちょっと待ってて!!」 「と、盗賊退治ですと!?」 どういう話の繋がりでそうなったのか・・・。あまりのことに思わずそう声に出してしまった。 「―――――――――――――― ・・・何を考えているんだ、君達はッ!!」 展開についていけずに、護衛獣のみんなも、も。呆然と立ち尽くしていたが ネスティまでもが二人を追いかけて走り出す!! 「え!?あ、ちょっとネスティ!?ネスティまでどこいくですかーーーッ!!(汗)」 の叫びも虚しく、二人とその後を追った兄弟子は もう小さい後姿しか見えなくなっていた。 ネスティ速ッ!?(汗) 「・・・デスクワーク派ではなかったのですか・・・ネスティ・・・(呆)」 取り残されたが、呆然と呟く。 「ど、どうしましょう!?さん!」 レシィの慌てた声で、は現実に引き戻された。 「はッ!?ど、どうするですかッ!?ひ、ひとまず・・・」 「オイ!!さっさとアイツラの後追うぞ!!あのオンナに死なれでもしたら オレ達ははぐれだ!!帰れやしねェ!そんなことになってたまるかよッ!!」 バルレルが先陣を切って走り出す。 バルレルは悪魔とは言えチビッコだ。 そのバルレルの方がしっかりしているなんて、情けないとは思ったが・・・ 今この中で一番思考が冷静かつ、正しいだろうバルレルの判断に は頷くと、彼に続いて走り出した。 「レシィ!ハサハ!レオルド!ひとまず3人を追いかけるですよ! たった3人で盗賊のアジトに乗り込むなんて、自殺行為もいいところなのですッ!!」 「は、はい!!」 「・・・・・・(コクン)」 「了解シマシタ。あるじ殿ヲ護ルコトガ、私ノ最優先事項デス。」 ・・・そうして3つの小さな小さな後姿を追って ――――――――――――――― ・・・そして現在に至るのです。(疲) 「それにしても!まだそのアジトにはつかないのですかねぇ!?」 だっていい加減疲れてきたですよ!!(怒) がヤケになってそう叫ぶ。 するとバルレルがふと真剣な瞳になって・・・それからニヤリと笑みを浮かべた。 「―――――――――――――――― ・・・どうやら着いたみたいだぜ。」 ・・・面白いことになりそうだ、と言わんばかりに。 その笑みに外見以上のものを感じて・・・ なんとなく、バノッサのことを思い出してみたりする。 あ〜・・・バノッサはある意味大きな子供ですから。似ているのですかねェ・・・(遠) お前に言われたくないだろう。 「ほぇ?着いたって・・・どこなのですか?」 キョロキョロと辺りを見渡してみるが、はげて赤茶色い土の見える地面が続いているだけだ。 の問いに、バルレルが足を止める。それを合図に、もレオルドも走るのをやめた。 「・・・いいか?こっからは静かにしろよ?」 それに4人はコクンと頷き、足音を忍ばせてバルレルのあとに続く。 ・・・すると、人の話し声が聞こえてきた。 1人ではなくて、何人かの声がする。少なくとも6人は確実にいるだろう。 そして、その中で一段と高い少女の声は・・・間違いなくトリスだった。 それは歩くたびに大きくなるので、自分達が声の発生源に近づいているのだとわかる。 バルレルが完全に歩くことをやめ、なにやら下を覗き込む。 どうやら、地形がそこから急な降りになっているようだ。もその隣に陣取り、同じように下を覗く。 「―――――――――――――― ・・・トリス!マグナ!ネスティ・・・!!」 顰めた声で、名前を呼ぶ。3人は既に野盗に周囲を取り囲まれていた。 「ご、ご主人様・・・!!」 その光景を見たレシィは、今すぐにも卒倒してしまいそうに顔色が蒼褪めている。 レシィの奥に、心配そうにマグナを見るハサハの顔もあった。 すると突然ハサハの耳がせわしなく動き出し・・・ 「・・・誰か・・・・・・くる。」 そう言って、自分達がいままで走ってきた道を振り返る。 「え?」 「2ツノ生体反応アリ。コチラニ時速4きろノすぴーどデ接近中。」 レオルドがデータを弾き出し、も腰の短剣に手を掛けつつ後ろを振り向いた。 「・・・野盗の仲間か・・・?」 バルレルがこっそりと耳打ちする。 「・・・もしそうだとしても、隠れる場所もないですし。だったら本隊と分散して叩いた方が お得じゃないですか?2人なら、この人数いれば余裕なのですよ。」 隠れたって、どうしてもレオルドがはみ出るのです(酷) 「た、戦うんですか!?さん!?」 「お前はいちいち泣いてんじゃねぇよ!さっさとあのオンナ助けねぇと、二度と帰れなくなっちまうぞ!」 「そ、それはそうですけど・・・」 バルレルにきつくそう言われて、レシィの瞳にはもう涙が滲んでいる。 が二人の言い争い(めちゃくちゃ一方的)を止めようと口を開きかけたが それより先に、強い眼差しで前方を見つめているハサハの声によって、それは中断された。 「・・・・・・くる、よ・・・?」 「戦闘準備、整イマシタ。」 「・・・チッ!今は取り敢えずこっちが先だ。」 舌打ちを一つして、バルレルが槍を構える。 レシィも不安そうに眉を顰めながら、拳を握り締めた。 けれど、姿を現したのは・・・ 「お?なんだお前達。・・・ここいらを根城にしてる野盗・・・ってワケじゃなさそうだな。」 「・・・フォルテ。あんたどうやったらこの子達が野盗に見えるのよ?」 顔に絆創膏を貼った、大柄な冒険者風の男と 綺麗な長い黒髪をして弓を持っている、巫女装束の女の人。 リィンバウムにも絆創膏ってあったのですね。 緊張感の欠片もない発言だな。 どうやら敵ではないらしい。 そうわかって達が脱力していると、巫女装束の女の人がこちらに近づいてきた。 ・・・バルレルだけは、それでもまだ。鋭い視線を緩めていなかったが。 「えっと・・・あなた達。この近くには野盗が出るらしいから、 早くどこかへ行ったほうがいいわよ?」 「でも安心していいぜ?この俺がすぐに退治してやるからな! そうしたら賞金もたんまり貰えるし、まさに一石二鳥ってやつだぜ。」 余程自信があるのか、そう言って笑顔を見せる絆創膏。(←違ッ!?) その格好と今までの話から判断すると、彼らは賞金目当てでやってきた冒険者のようだ。 「・・・冒険者の人、なのですか?」 「ええ、そうよ。」 そう返答され、がバルレルを見る。バルレルはその視線の意味を悟ったらしい。 「・・・これだけいりゃあ、どうにかなるんじゃねェの?」 「???」 バルレルの言葉に疑問符を浮かべる冒険者の二人。 は他の3人とも顔を見合わせ、誰にも異論がないことを確認した。 それから、二人に近づくと・・・ 「あの・・・共同戦線と行きませんですか?」 がここまで来た経緯を話すと、二人は快くそれに応じてくれた。 まずは敵情視察ということで、こっそりと下を見下ろす。 「・・・それじゃあ、あの囲まれてるのがお前さん達の連れってことか・・・」 「そうなのです。としては、あれだけ話してたのにあのおじさん達 まだこっちに気付いてないみたいですし、奇襲し掛けるのが一番いいかと思ってるのですが・・・」 「・・・ほぅほぅ?なかなか目の付け所がいいんじゃねぇか?」 そんな会話を交わしていると、バルレルが一瞬目を丸くしてを見た。 ・・・そしてなにか思いついたように、ニヤリと笑う。 「・・・なんだ、テメエもそう思ってたのかよ?なら話が早ェ。」 「ほへ?何が早いのですか?バルレル。」 「オレにいい作戦があるんだよ。・・・耳かせ。」 言われたとおりに耳を近づける。 バルレルが、ハサハやレシィにも聞こえないくらい小さな声で、そっと耳打ちした。 は一瞬眉を顰め・・・ 「・・・本当に、出来るのですか・・・?」 「・・・あぁ、オマエくらいなら平気だろ。」 はう〜んとしばらく首を捻って考えてから。 「・・・わかったのです、やるですよ。でも本当に大丈夫なのですか?」 「ああ。任せとけよ。」 笑みを絶やさないバルレル。それは自信なのか、それとも・・・ けれどは、どうやら前者ととったようだった。 「ならいいのです。きっとびっくりするのですね〜。」 「おいおい、どういう作戦だよ?」 「よくぞ聞いてくれたのです!それはですねぇ・・・」 待ってましたとばかりに、が奇襲の作戦を告げようとした、そのとき。 「馬鹿にしないでよッッ!!」 トリスの叫ぶ声が聞こえてきて、全員が慌てて視線を下へと移す。 「ヤベェな・・・そろそろ始まるぜ。」 「おい!時間がねぇ!さっさといくぞ!」 バルレルの叱咤が飛ぶ。 もういつ戦闘が始まってもおかしくない、張り詰めた雰囲気が流れている。 は力強くバルレルに頷き返すと、 バルレルと共にもう少し位置にある高い岩場へと走っていった。 「お、おい!なにする気だよ!?」 「見ていればわかるのですよ!だからすぐに突入してくださいなのです!!」 はそれだけ叫ぶと、更に速度を上げて走っていってしまう。 「・・・仕方ねぇ!もう始まっちまうし、あの二人を信じて行くしかねぇな!」 「本気なの!?フォルテ!?」 「・・・大丈夫・・・」 ポツリと、ハサハが呟いた。 「え?」 「ハ、ハサハさんの言う通りですよ! バルレルくんとさんなら、きっと大丈夫です!信じてください! ・・・レオルドくんも、そう思いますよね!?」 「・・・あるじ殿ヲ護ルコトガ私ニ課セラレタ最優先命令デスカラ。」 なにがあっても。 3人はバルレルとを信じてあの中に突っ込むつもりらしかった・・・。 「――――――――――― ・・・わかったわ。じゃあ、やりましょうか?」 「よっしゃ!一丁暴れてやるぜ!!」 「ぼ、僕も頑張ります!!」 「ハサハも・・・頑張る、よ・・・?」 「突入マデ、かうんどだうんヲ開始シマス。5・・・4・・・」 「よし・・・準備はいいな?」 「い、いいのですよ!でもでも!絶対にそのまま落下しないでなのですよ!?」 「ばぁーか。オマエぐらいなら掴んで飛んでも、落ちやしねェよ。」 「・・・信じるのですよ・・・?」 「あァ。・・・絶対に落ちたりなんかしねぇ。いいぜ?信用してくれてもよォ。」 そう言って、不敵に微笑んだ・・・。 「俺達に協力するって言うんなら助けてやらなくもなかったんだが・・・ どうしても協力したくないって言うんだから仕方ねェな・・・」 野盗の一人が、薄汚い笑みを浮かべる。 マグナとネスティは、トリスをお互いの背に庇う形で立っていた。 「マグナ・・・」 「大丈夫だよ、トリス。」 不安そうにマグナの服を掴むトリスに、マグナが言い聞かせる。 「・・・大丈夫だぁ?この状況でなにが大丈夫だって言うんだろうなぁ?」 「・・・・・・。」 ネスティが無言で野盗を睨みつけた。 「―――――――――――― ・・・そろそろ死んでもらおうか。」 また他の一人が、腰に提げていた剣を抜く・・・ 刀身が光を反射する。それを見たトリスは、思わず唾を呑んだ。 気丈な彼女は、ずっと強気な表情は崩さないままだったが それとは裏腹に先程から、動作の端々に不安が滲み出ている。 トリスがマグナの服を、一層強く掴んだ。 ―――――――――――――――――― ・・・そのとき。 ヒュン!! 何かが風を切る音がした。その正体は・・・一本の矢。 それが、抜き身の剣を持った野盗の足元に、見事突き刺さっていた。 「誰だッッ!?」 「今すぐその子達から離れなさい!!」 聞いた事のない女性の声がして、トリスがそちらを振り返る。 「・・・ご主人様ぁ!!」 「レシィ!?・・・ハサハにレオルドも!!」 「なんだって!?」 トリスの声にネスティも驚愕の声をあげ、声のしたほうをチラリと見た。 「イマオ助ケシマス、あるじ殿。」 「ハサハ、頑張るから・・・・・・待ってて、ね?」 「ま、成り行きだが加勢するぜ!」 「チッ!!仲間がいやがったのか!!」 野盗が忌々しげに舌打ちをし、武器を構えた。 「だがなぁ!姉ちゃんの矢が俺達全員を射殺す前に コイツラの首がとぶぜ!!」 そう野盗が叫ぶ。それは正しい。このままならば、いずれはそうなるだろう。 ・・・けれど、弓を構えた女性は笑みすら浮かべて。 「・・・さぁ?それはどうかしらね?」 「なんだと・・・?」 確信の籠もった彼女の表情に、野盗が訝しむ。 そして、助けに来たメンバーを見たマグナが、ポツリと呟いた。 「・・・あれ?とバルレルは・・・??」 「・・・ぅうひゃああああああああああああッ!!??」 急に頭上から聞こえてきた悲鳴に、誰もが・・・武器を構えていた野盗までもが ポカンと口を開けて、思わず上を見上げた。 ドシン!! 盛大な音と砂煙を巻き上げて落下してきたのは・・・ 「〜〜ッ!?痛いのですーーーーーッッ!!!(泣)」 「「「・・・ッッ!?」」」 落ちてきた人物に、驚いた3人が声をあげる。 しかも、は落ちてきた時に野盗の一人を下敷きにしていて・・・ 下敷きにした野盗を中心に、まるでドミノ倒しのように。何人もの野盗が巻き込まれて倒れていた。 落下の衝撃はかなり強かったらしく、の真下にいる野盗なんかは 多分、数日間は動けないだろう。・・・完全に白目を剥いて、気を失っている。 「・・・このガキ!!よくもやりやがったな!!」 運良くドミノ倒しを免れた野盗の一人が、 未だしゃがみ込んだままの目掛けて短剣を振り上げる。 「――――――――――――――― ッ!危ないッッ!!」 はマグナの叫び声に気付いたが、余程強く腰を打ったのか、座り込んだまま。 が瞳を丸くして野盗を見上げたのが、マグナの位置からでも見て取れた。 「いやあ!!ッ!!」 トリスが切り裂かれるを思い浮かべて、顔を背ける。 ・・・けれど次にトリスの耳に聞こえてきたのは、の悲鳴ではなく・・・ 「うぎゃああッ!」 どう考えても、野盗のもの。 トリスが瞳を開けると、野盗が地面に倒れているのが視界に入った。 倒れている野盗の傍に、立っている足は・・・ 「ケケケ!オレに任せりゃこんなもんだぜ!」 「バルレルッ!!」 トリスが歓喜の声を上げる。その様子にバルレルが満足そうに笑った。 「ご主人様ッ!大丈夫ですかッ!?」 すぐ近くで聞こえたレシィの声にハッとして、トリスが辺りを見回すと ほとんどの野盗はによって戦闘不能にされ。 僅かに残った残党達は護衛獣と見知らぬ二人の人物に、ほぼ片付けられた後だった。 「バ、バルレル!!!嘘!嘘吐いたですねッッ!? 落とさないって言ったですのにッッ!!」 マグナに手を借りて立ち上がったが、涙混じりにバルレルに抗議する。 だがを落とした当の本人バルレルは、ケロッとした顔で。 「オレは、お前を持ち上げて飛んでも落ちないって言っただけだろうが。 手を離さないなんて一言も言っちゃいねぇぞ。」 それを聞いたは、一瞬瞳を点にした後・・・ 「むきいいいぃぃ!?騙されたのですーーーッ!!!」 「ケッ!嘘は吐いてねぇだろ!」 「その台詞は聞き飽きたのですッッ!!」 このちびっこ悪魔!にそっくりでやがるですよッ!!(怒) やがるって・・・(汗) 「なんだ、俺はてっきり作戦のうちかと思ってたんだが・・・違ったのか?」 大柄な男が、呆れた顔でを見た。 「違うのですよッ!確かに上から不意を付くつもりでしたけどッ!! 落ちる予定はなかったのですーーーーーッ!!」 地団駄を踏むに、ネスティが一瞬緩ませた表情を引き締めて声をかける。 「、助けてくれたことには礼を言う。・・・だがそちらの二人は一体誰だ?」 「・・・あ。」 そう問われて、は未だ二人の名前すら聞いていないことを思い出した。 「えっと・・・賞金目当てで来た通りすがりの冒険者さんなのです!」 の返答に、紹介された二人が一番脱力したのは・・・言うまでもない。 「もへぇ?じゃあ二人はコンビなのですか・・・」 ゼラムへの道すがら、はそう呟いた。 あの後、名前も聞いていなかったことに苦笑しながら自己紹介をした。 黒髪の女性がケイナ、大柄な男性がフォルテと言うらしい。 互いに気まずそうに、視線を合わせては逸らし。 合わせては逸らしをしていたトリスとマグナとネスティの3人を見て、 これは自分達に申し訳ないとか、会わせる顔がないとか。 ・・・そういう以外になにかあったのだと悟ったは。 伸びていた野盗を縛り上げた後。野盗が逃げ出さないよう見張っているように告げて、 3人をあの場に残し、ゼラムに役人を呼びに向かうことにしたのだ。 「こんび??」 ケイナが、聞きなれない言葉に首を傾げる。 はリィンバウムの人々には、英語が通じないことを思い出した。 「えっと・・・相棒ってことなのです。」 「ほー?どこの言葉だか知らないが、変わった言葉を知ってるんだな。」 フォルテに言われてギクっとしたは、乾いた笑い声をあげて話題を逸らす。 「・・・あ、あははは!いやぁでも、は二人は恋人同士なのかなって思ってたのですよ!」 「なッ!?・・・ッ!?どうしてあたしがフォルテなんかと・・・!!」 おや?案外図星なのですかね・・・? あまりのケイナの慌てようを見て、冷静になった頭でそんなことを思う。 そんなケイナを一瞥して、フォルテが溜息を吐いた。 「俺だって、もう少しこう・・・色っぽい方が・・・」 ドガシッッ!! 「はべぶッ!?」 凄い音がしてケイナの裏拳が綺麗にフォルテにヒットし、 フォルテは蛙の潰れたような呻き声をだして、後方に大きく飛んだ。 ケイナは手をパンパンと叩くと、やり遂げた爽やかな笑顔を達に向けた。 「さぁ!行きましょうか!」 「は、はいなのです・・・(汗)」 「は、はいぃ!!」 「・・・おぅ・・・」 は冷や汗を流し、レシィはビクビクし、バルレルは目を見開きながら。 痙攣しているフォルテを尻目にケイナに続いた。 この雰囲気をどうにかしようと思ったが、必死に話題を探す。 「で、でもケイナって、その格好からすると巫女さんなのですか?」 「―――――――――― ・・・え?」 ケイナが驚いた顔をして立ち止まり、を振り返った。 「はれ?違ったですか・・・?」 が見当違いかと、そう呟いたとき。フォルテが凄い勢いで、の肩を掴んだ。 「・・・ッ!お前ケイナの職業がわかるのかッ!?」 フォルテの迫力に、は思わず数歩後退りたい衝動に駆られたが しっかりと肩を掴まれているのでそれは出来なかった。 フォ、フォルテ復活が早いのですねッ!!(汗) 「え?え!?だって巫女さん違うのですか・・・? もしかしてリィンバウムには巫女さんっていないですかッ!? あ、でもハサハも着物着てるですし・・・」 「・・・お姉ちゃん。・・・ハサハは、シルターンから・・・来たんだよ?」 「はわッ!そうだったです!!・・・ん?でも・・・」 ならどうしてケイナは巫女さんの格好してるですかね・・・?? 「・・・フォルテ、が困ってるわよ。」 ケイナの苦笑しながらの指摘にフォルテがハッとして、やっとの肩から手を退けた。 あぅ・・・跡が残ってそうなのですよ・・・ 今日はアザだらけになる日なのですかね?(泣) 「悪い悪い。」 大して悪いとも思っていなそうにそう言うと(酷)、フォルテは頭を掻いて、もう一度口を開いた。 ―――――――――――――― ・・・今までで、一番。 ・・・戦う時よりも真剣な表情で・・・ 「・・・実はな、ケイナは俺と会うまでの記憶がねぇんだ。」 それには、キョトンとした顔をして瞳を丸くする。 「ほえ?ケイナも記憶がなのですか・・・・・・ラッシュなのですかね?」 記憶喪失にラッシュがあってどうする!! のおとぼけた台詞に、今度はフォルテがキョトンとする番だ。 「ケイナもってこたぁ・・・・・・」 「・・・あァ、そいつも記憶がねぇんだよ。」 バルレルが面白そうに笑って言う。 「そうなの!?!?」 驚くケイナに、は笑顔で答えた。 「はいなのですよー!も記憶無いのですー。」 随分呑気な記憶喪失で。 嬉しそうなとは正反対に、フォルテは背を丸め、大きな溜息を吐く。 「・・・じゃあ手がかりはナシ、か・・・」 「ムッ!そんなことないのですよ!その格好は巫女さんだって言ってるじゃないですかッ! そうですよねぇ!?ハサハ!?」 「・・・・・・(コクン)」 がハサハに話をふると、静かに、けれどはっきりと。ハサハは頷いて見せた。 結構長い間冒険家業をやっているが、それでも聞いたことのない言葉に、フォルテは唸る。 「あー・・・取り敢えず、その“ミコ”ってのはどんな職業なんだ?」 「はれ?やっぱりリィンバウムには、巫女さんはいないのですか? ケイナの服って、リィンバウムでも珍しいので?」 「・・・ええ。今まで色んなところをまわったけど、同じような服装の人は見た事がないのよ。」 「まぁ、手がかりになるんじゃないかとは思ってたんだがよ。」 「うーんと。巫女さんっていうのは、神社とかにいるのですよ。」 「・・・ジンジャ・・・?」 フォルテが首を捻る。見ると、レシィやバルレル、レオルドも。 似たようなリアクションだった。 「神社って言うのは・・・朱い鳥居があったり。お賽銭箱のあったりする・・・」 説明してはみるものの、頷いているのはハサハだけ。 他の人は全員、神社の時と変わらない反応だった。 「・・・オサイセン・・・ってなんですか?さん。」 「え、えーっとぉ・・・神社はお願い事をしに行くところでして、 そこに置いてある箱に、お金・・・小銭ですけど。 それを入れて、だからどうか叶えてくださいって頼むのですよ。」 「そうなんですか・・・」 いまいちしっくりこない様子で、レシィが返事をする。 「寄付金みたいなもんか?」 「あーーッ!!・・・多分、そんな感じなのです。」 「・・・神様に・・・仕える、お仕事なんだよ・・・?」 「そ、それなのです!!ハサハ凄いですよーーー!!」 がハサハの頭を撫で、ハサハはそれに気持ち良さそうに、瞳を細める。 「ケッ!つまりは神頼みに金払うってことかよ。気に入らねェ・・・」 バルレルがそう吐き捨てるように毒づいてから、を見て・・・ 「そっちのチビが凄ぇんじゃねェ・・・ お前の言葉が足りねェだけだろ。」 「はぐぅッ!!そ、それは・・・!(痛)」 の様子に満足そうにせせら笑うと、ニヤリとまた質の違う笑みに変える。 それはあの、外見にそぐわない笑みで。 はなんとなく。 バルレルがまともな発言をするんじゃないか、そう思った。(失敬な) 「――――――――――――― ・・・まァ。だがこれでわかったことがあるぜ。」 「・・・え?」 ケイナが少し、驚いたような声を出す。 全員の視線がバルレルに向けられ、バルレルはフン!と荒く息吐いた。 「そこのシルターンのキツネにも、このオンナにも。共通してることは1つだ。」 「もへ?とハサハに共通してることですか?」 の問いに、バルレルが頷く。 けれど、にはなんのことだかさっぱり見当が付かない。 ハサハを見下ろすと、丁度こちらを見上げていたハサハと目が合う。 「――――――――――――― ・・・二人トモ召喚サレタ身デスネ。」 レオルドの声が響く。 ・・・あ。忘れてたのですよ。 (コラ) それにバルレルは表情を変えずに。あぁ、と返事を返した。 「“ミコ”とかって言う職業を知ってる二人が召喚獣なんだ。 ・・・ってこたァ、そっちのオンナも召喚されてきたってことだろ。」 「高確率デ、りぃんばうむ外。・・・ツマリ異世界ノ人間ダトイウコトニナリマス。」 「・・・あたしが・・・異世界の人間?」 呆然としたケイナの声が耳に届き、レシィがレオルドの腕を引く。 「そんな・・・ッ!それは確かにそうですけど・・・レオルドくん、もう少し良い言い方が・・・」 そんなレシィにちょっとだけ驚いて、しばらく見つめてから。レオルドは不思議そうに・・・ 「・・・申シ訳アリマセン。言ッテイル意味ガ解ラナイノデスガ。」 「・・・ええッ!?」 レオルドの言葉に今度はレシィが驚く番だ。ヨロヨロと後退って、 トンと背中がの足にぶつかったところで、それはやっと止まった。 謝罪するところから見ても悪意があるとは思えないし。 なによりも今まで・・・まだ短い間だけれども、一緒に居て。レオルドが悪い人(?)だとは レシィにはとても思えなかったのだ。 困惑するレシィに、がそっと声をかける。 「・・・レシィ。機械兵士って言うのは、最初は感情っていうものが良くわからないらしいのですよ?」 「え!?・・・そう、なんですか・・・?」 「はいなのです。でもきっと。レオルドは達と一緒に居て、これからどんどんそれを学ぶのですよ。」 そう言ってにへら、と緊張感の無い笑みを見せた。バルレルが意外そうに口を開く。 その顔は、まるでもレシィみたいに真っ先に食って掛かるタイプだと思っていた ・・・そう言っているようで。 「・・・知ったふうな口聞くじゃねェか。知り合いに機械兵士でもいんのかよ?」 「直接会った事はないのですけど、がお世話になっていた人達の知り合いに 一人いるのですよ。もうリィンバウムに来て長いらしいですけど、 最初はそれを理解するのに苦労したんだ・・・って聞いたのです。」 ・・・そうやって言ってたって。ソルが言ったです。 「だからみんなでこれからいっぱいいっぱい、 色んな“気持ち”を教えてあげればいいのですよ。ねぇ?レシィ。」 それこそ楽しい気持ちから嬉しい気持ちも。 誰かを大切に想うことだって、きっと教えてあげられる。 決して全てが良い感情ではないだろうけれど。当然のように思っているけれど。 感情があるというのは、とても幸せなことだと思うから。 「は、はい!僕、たいして役に立てませんけど・・・それなら教えてあげられます!!」 レシィが拳を握り締め、顔を少し紅潮させながら。 嬉々とした表情でレオルドを見上げて、やたら気合の入った口調で言った。 当のレオルドは、なんのことだかわかっていないようだったが。 「・・・おい、ケイナ。―――――――――― ・・・大丈夫か?」 フォルテがケイナの顔を覗き込む。 聞こえてきた心配そうな声に、ケイナはハッと我に返った。 「・・・あ。・・・え、ええ。大丈夫よ・・・」 そうは言っても不安の拭えない表情に、フォルテが眉を顰める。 元気になったレシィも、ケイナのことを思い出して。しゅん・・・と尻尾を垂れた。 けれど。漂い始めた暗いムードを吹き飛ばしたのは、異常なくらい明るいの声。 「だぁいじょうぶなのですよ、ケイナ!!」 「・・・」 「あんな風には言うですけど、レオルドだってリィンバウムの出身じゃないですし。 もハサハもレシィも。小生意気なバルレルも違う世界の出身ですよ?」 「小生意気は余計なんだよ!!それになァ!こう見えてもオレは・・・」 「うるさいのですね!今はバルレルにかまってるヒマなんかじゃないのです!! じゃりんこは黙ってるですよ!!」 出ましたね、さんの毒舌・・・(汗) ・・・・・・・・・(コクコク) 似たような感想を何人かが持っているにも拘らず。はそれを気にすることなく言葉を続けた。 「・・・コホン。それでですね、つまり・・・ フォルテの方が仲間ハズレなのですよ!」 「あ!?俺か・・・!?」 まさかそんな風に言われるとは思ってもいなかったのだろう。 フォルテが自身を指差して、すっとんきょうな声を上げた。 「そうなのでーす!今はフォルテだけですよ、リィンバウム出身なのは。」 「そりゃそうだけどよぉ・・・(汗)」 困ったように頭を掻くフォルテを見て、ケイナが苦笑を漏らす。 「・・・それもそうね。」 「おいおい!ケイナ、お前まで・・・」 フォルテとケイナは互いに顔を見合わせ、笑みを浮かべる。 そんな二人を見て、はなんだか嬉しくなってきた。 「も自分が何所から来て、どんな人間だったのか。そんなのは知らないですけどどうにかなってるですし・・・ それに今や時代はグローバル!!なのですよ!」 リィンバウムもグローバル化を迎えるのです!! わざわざ結界を張ったエルゴの王の意志はどこへ!? 「ぐろーばる???」 「あ!グローバルって言うのは・・・要約すると世界規模・・・? ・・・いやいや世界って言うとリィンバウムですから・・・ ロレイラルもシルターンもメイトルパもサプレスもリィンバウムも!! 全部の世界のことをひっくるめて考えようと!! 世界規模の基準を、“リィンバウムだけ”じゃなくて“5つの世界まとめて”に変えるのです!!」 ふん!!と鼻息も荒く、自信満々に語る。そんなに、フォルテが言った。 「・・・なんだか良くわからねぇが、やたらと壮大なことを言ってるんじゃねぇか?」 その言葉にまた、が瞳を輝かす! 「壮大ですとも!!少年は大志を抱かなくてはならないのです! ・・・あ、は少年ではないですねぇ・・・じゃあ抱かなくてもいいのですか?」 いや、なんか違うから。 の言っている言葉の意味は、正直言って良くわからない。 ・・・けれど、ああやって胸を張って楽しそうに語るを見て。 ・・・ケイナはなんとなく、明るい気持ちになった。 彼女は精一杯、記憶の無くなった今を生きている。 「・・・えーっとですねつまり・・・住んでる世界が違うっていう壁なんて、 は大して問題じゃないと思うのですよ。 言葉が違っても、姿形が違っても。お友達になるのに問題はないのです。」 自分の気持ちを伝えようと。未だ懸命に説明をしている。 会った瞬間は子供だと思ったけれど・・・ あたしもを見習わなくちゃいけないわね。 ・・・そう思って、ケイナは笑みを浮かべた。 「・・・ありがとう、・・・」 ケイナの見せた、女性であるも見惚れてしまいそうな・・・綺麗な、笑顔。 ・・・フォルテまでもがポカンと見惚れていたことは内緒で。 お礼を言われたも、嬉しさが込み上げてくる。 それは隠し切れずに・・・いや、隠そうとなんてしていないのかもしれない。 良く、花の咲いたような笑顔だなんて人は言うが こう言う笑顔のことを言うんじゃないかと思うぐらい・・・そんな、笑顔だった。 「お互い様なのです。ケイナ達が来てくれなかったら、マグナ達を助けられなかったと思うですし。」 あ、一緒に記憶喪失同盟とか作るですか? 情報はここへ!みたいなやつ。 いや、いらんから。 いつの間にか、みんなに笑顔が戻る。 ただ一人、眉間に皺を寄せてを見ていた・・・ ――――――――――――――――― ・・・バルレルを除いては。 けれど本人以外、誰もそれに気付く事はなく。・・・今、この瞬間を楽しんでいた。 笑い声を響かせて、達はちょっと前にひた走った道を戻って行く。 「あ、ゼラムが見えてきました!」 「アト800めーとるデ、目的地ニ到着シマス。」 ―――――――――――――――――― その道のりは、走っていた時よりも短く感じた。 の長い長い一日が、終わりを告げようとしている・・・・・・ 「つまり・・・ネスティを早く解放する為に、野盗を捕まえて手柄を立てようとした・・・と。 そういうことなのですね??マグナ?トリス?」 「は、はい・・・(汗)」 「・・・うん。」 野盗も無事役人に引渡し、全てを終えて帰ってきてから。 にジトメで見つめられ、トリスとマグナは居心地悪そうに、視線を彷徨わせた。 ・・・ちなみに。トリスとマグナとネスティの3人はによって 慣れない・・・というよりはしたこともない、正座をさせられている。 ・・・今のは、それだけ逆らえない雰囲気を漂わせているのだ。 「・・・ネスティが、『命令だから仕方なしに。』・・・そう、言ったからなのですよね?」 「う、うん・・・」 「ぼ、僕はただ・・・!!」 「黙らっしゃいなのですッッ!! ネスティもトリスもマグナも・・・3人とも悪いのですよ!!」 「「「う゛・・・・・・」」」 「トリス!マグナ!ネスティが本気でそんなこと言うと思ったですか!? よーく考えてみればわかるハズなのです!」 「「・・・・・・ぁ。」」 「ネスティもなのです!!そんなふうに言ったら二人が、真に受けるって 簡単に予想がつくのですよ!!何年兄弟子やってきたですか!この姑!!」 「・・・・・・最後の姑だけは腑に落ちないんだが・・・」 「黙るですッッ!!3人とも反省するですよッ!!」 最もな意見を言おうとしたネスティの言葉を遮って、が叫ぶ。 それにはトリスもマグナもネスティも、項垂れるしかなかった。 「罰として、3人とも今日は夕飯抜きなのですッ!!」 「ええええーーーッッ!?」 「嘘だろッ!?!!」 「なッ!?どうして僕が・・・!!」 これ、一度言ってみたかったのですよv そんな理由だったのかい。 三者三様の反応を返す3人を見て。は内心、そう呟いていた。 結局。そのあとマグナとトリスが、に泣きながら縋り付いて謝り。 そのあまりの剣幕に、ついにはが折れて ・・・どうにかこうにか、ご飯にありつけたそうな・・・ |
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戯言。 サモン1をやった人はわかりますよね?夕食抜きはリプレのあれです。 きっとが来てからも、何回かガゼルとかに言ってたんでしょうね。 案外長くなってしまいましたが編、ゲームで言うと、まだ1話(笑) ケイナとフォルテと出会いました。 ケイナとは記憶喪失同士ということで、仲良くさせていこうと思ってます。 次はついに、レルムの触覚とお芋さんの登場ですね!(爆) なので多分、次も視点(?)でしょう。 レルムが終わってちょこっとしたら、やっとと合流します。 なんか・・・こう。ばっかかいてると 無性にがかきたくなってですね。 をかいてると、をかきたくなるんです。(苦笑) |